九〇式艦上戦闘機

九〇式艦上戦闘機（A2N）について

九〇式艦上戦闘機は、1932年（昭和7年）に大日本帝国海軍によって正式に採用された艦上戦闘機であり、その略符号はA2Nです。この機体は中島飛行機によって製造され、日本人が初めて設計・製造した戦闘機とされています。

歴史的背景

九〇式艦上戦闘機の開発は、1929年（昭和4年）に中島飛行機が始めました。当時、同社は三式[[艦上戦闘機]]の後継機の受注を目指しており、技師の吉田が設計主任として新型戦闘機の開発に着手します。試作機は、米国製のボーイングF2BやBoeing100を参考にしており、搭載エンジンには中島ジュピター6型を使用していました。この試作機は「吉田ブルドッグ」と呼ばれていました。

1930年（昭和5年）には2機目の「吉田ブルドッグ」が完成し、海軍に「NY戦」として提出されました。しかし、海軍のテストでは従来の三式[[艦上戦闘機]]より若干性能が向上したものの、運動性や実用性に関しては期待には応えられず、不採用となってしまいました。

中島飛行機はその後、英国製のBristol Bulldog Mk.2を参考にし、機体の重量を軽減し、主翼はF4Bと同型の翼端楕円形に設計し直しました。さらにエンジンも中島 寿2型に換装した試作機を2022年（昭和7年）1月に海軍に納入しました。この機体は海軍のテストで三式[[艦上戦闘機]]を大幅に上回る性能を示し、海軍はその年の4月に本機を九〇式艦上戦闘機として制式採用し、すぐに生産が始まります。

就役と運用

九〇式艦上戦闘機は、1932年の後半から実戦に投入され、空母や陸上部隊の両方で幅広く使用されました。この機体は、海軍の戦闘機戦術の研究や訓練にも活用され、国民の義捐金によって多くが報国号として献納されました。横須賀海軍航空隊の分隊長であった源田実大尉は、編隊特殊飛行を行い、その飛行スタイルは「源田サーカス」として広く親しまれました。同様に、岡村基春大尉の編隊アクロバット飛行は「岡村サーカス」として有名でした。

九〇式艦戦は当初、三式[[艦上戦闘機]]と併用されていましたが、1934年末には空母の艦上戦闘機が完全に九〇式艦戦に切り替わりました。支那事変においても戦線に投入され、1937年8月16日には加賀の分隊長五十嵐周正大尉による六機が敵戦闘機と交戦し、見事に敵機を撃墜しました。当日の戦績は、コルセア1機とダグラス2機を含む三機の撃墜を報告しています。

生産と派生型

しかし、戦闘機の技術の進歩が速かったため、九〇式艦上戦闘機は旧式化するのも早く、生産機数も中島飛行機で約40機、佐世保海軍工廠で約100機、合計で約100～140機と少数にとどまりました。

派生型の詳細

• - 九〇式一号艦上戦闘機（A2N1）: 下翼に3度の上反角を持ち、胴体両側には機銃架を搭載したモデル。少数機生産。
• - 九〇式二号艦上戦闘機（A2N2）: 機銃の設置方法が改良され、機首上面に移設。のちに大半の九〇式がこの二型に。
• - 九〇式三号艦上戦闘機（A2N3）: 上翼に5度の上反角を持つ、改良機体。
• - 九〇式複座練習戦闘機（A3N1）: 副操縦装置を追加した複座の練習機。

まとめ

九〇式艦上戦闘機は、設計・製造ともに日本人による初の艦上戦闘機として、海軍で幅広く使用され、歴史に名を刻みました。その性能と運用は、戦争における日本の航空戦力の一翼を担い、エンターテインメントの面でも多くの人に親しまれた記憶を残しました。

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