九〇式軽迫撃砲

九〇式軽迫撃砲について

九〇式軽迫撃砲（90しきけいはくげきほう）は、1931年に大日本帝国陸軍により仮制式が制定された迫撃砲です。この火器は、従来のストークブラン式とは異なり、臼砲に近い設計の短砲身火砲です。その特性は攻城戦を想定しており、口径150mmの砲身を備えていますが、軽迫撃砲と称されるのは、他の重迫撃砲が存在したことに起因しています。そのため歩兵部隊が使用する通常の迫撃砲とは異なる、より重厚な火器と言えるでしょう。

開発と歴史

九〇式軽迫撃砲の開発は、1920年に始まりました。初期の段階では、有翼弾を発射する滑腔砲や導子付弾を発射する施条砲の比較試験が行われ、最終的には導子付弾の方が優れていると判断され、使用されることになりました。設計要領は1920年6月に提出され、同年12月には試作砲が完成しました。その後、さまざまな試験を経て性能向上が図られましたが、いくつかの問題にも直面しました。

特に1924年には試験中に砲が破壊される事態もあり、改修を重ねた試作砲が1925年に完成しました。これにより一定の性能が確保され、1930年には仮制式制定が提案されるに至ります。

生産と配備状況

制式化はされたものの、量産には至りませんでした。90通りの設計図が作成されましたが、これらは厳重に管理され、部隊には配布されないままでした。秘密保持の観点から、有事に備えた兵器の情報は限られた関係者にのみ伝えられる形となりました。そして、試製砲は陸軍技術本部に保管されていましたが、満州事変の際には海軍の上海陸戦隊に譲渡されたと言われています。

構造と特徴

九〇式軽迫撃砲は迫撃砲の形を持ちながらも、いくつかの独自の構造を有します。駐退復座機が砲身の上下に設置され、脚と床板が砲身を支える形式は現代の迫撃砲にも類似していますが、床板が脚の前方まで伸び、独特の外観を形成しています。

全長は約1525mm、全幅は1274mm、砲身の長さは771mmで、全備重量は530kgあります。この火砲は、主に以下の部品で構成されています：

• - 砲身：単肉構造で、口径は15cm。高い精度を誇ります。
• - 揺架：砲身と駐退器を結合し、安定した発砲をサポートします。
• - 駐退機：水圧式とバネ式の復座機から成り、発射後の衝撃を吸収します。
• - 砲架と小架：発砲時の衝撃を受け止め、移動機能を担当します。各部品は重量に応じて設計されており、分解しやすさや運搬性が求められました。

運搬と射撃性能

九〇式軽迫撃砲は馬や人力による運搬を考慮した設計がなされており、状況に応じて分解して輸送することが可能でした。砲撃準備を迅速に行うことも求められ、その速さは熟練砲手によって2〜3分で実現されています。

砲弾に関しては、軽弾と重弾の2種類が用意され、各種距離に応じた性能が求められました。特に1932年には九〇式榴弾が制定され、射程や炸薬の量が厳密に設計されています。

このように、九〇式軽迫撃砲はその特徴や設計において、過去の軍事技術の一環を成す重要な兵器として位置づけられています。

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