九五式折畳舟

九五式折畳舟について

九五式折畳舟（きゅうごしきおりたたみぶね）は、大日本帝国陸軍によって開発された特殊な舟艇です。この舟は、主に渡河や上陸作戦に用いられたため、その機能性が求められました。特に、陸上での輸送を容易にするために独自の折畳構造が採用されており、必要に応じてコンパクトに収納できる特性があります。これにより、移動や保管が非常に便利でした。

舟の構造

本舟艇は、二つに分割された組み立て式の構造を持っています。「舳半形舟」として知られる前半部分は、長さ415cm、幅145cmで、重量が98.5kg。一方、後半部分の「艫半形舟」は、長さ330cm、幅145cm、重量101.5kgとなっています。組み立てる際は、舟の上下を連結するための連接具が四つ使用され、安定した構造を確保できる仕組みです。舟の内部には、舟梁を支えるための受けが設けられており、計5本の舟梁が接続されることで、強度と浮力を持たせています。浮力は5,280kgと強力で、安定した航行が可能となっています。

また、櫓（長さ460cm、重量12kg）や棹（長さ380cm、重量3kg）といった漕ぎ具も付属しており、これらを使用して操船することができます。舟内には網やあかとり（浸水した水を汲み出すための道具）も備え付けられており、環境に適応した機能性を持っています。

歴史的背景と活躍

九五式折畳舟は1935年6月20日に制式制定が上申され、その後陸軍軍需審議会により仮制式が可決されました。この舟は、日中戦争や太平洋戦争において各地で活躍し、特に数隻を組み合わせて門橋や浮橋として利用されることがありました。

具体的な運用例としては、ミッドウェー作戦に関連する一木支隊による上陸計画が挙げられます。彼らは、上陸の際に使用するために40隻が用意されていました。より大型の上陸用舟艇である大発動艇から、上陸点手前の環礁でこの折畳舟に乗り換える計画が立てられました。これは、折畳舟の方が浅い水域での運用に適していたため、環礁を超える上陸戦略の一環として考えられていました。しかし、最終的には海軍が海戦で敗れたため、計画は実現しませんでした。このように、九五式折畳舟は戦時の様々な状況下での活用が期待されたものの、運命に翻弄されながら歴史に名を刻むこととなったのです。

関連項目

この舟艇に関連する項目として、「大日本帝国陸軍兵器一覧」や「陸軍船舶兵」があります。これらは、九五式折畳舟のように、戦争における重要な役割を担った陸軍の装備を理解する手助けになります。

参考文献

本舟に関する詳細な情報は、佐山二郎著の『工兵入門』（光人社、2001年）や、戦時中の公式資料『兵務課 渡河作業教範総則及第1部第2部の件(8)』（昭和16年、アジア歴史資料センター）などから得ることができます。さらに、陸軍技術本部の資料『架橋器材九五式折畳舟外1点制式制定の件』（昭和10年、アジア歴史資料センター）も参考になります。

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