九八式偵察気球

九八式偵察気球について

九八式偵察気球は、大日本帝国陸軍によって開発された偵察用の繋留気球であり、1936年に航空兵科から砲兵科に移管されてから、本格的な開発が進められました。この気球は、九五式偵察気球の後継機として位置付けられ、同年の8月1日に正式に航空兵科から移されたことで、陸軍技術本部第3部により改良が加えられました。

開発の際には、1937年の初めから試作に入ると、同年の7月には藤倉工業にて初の試作機が完成しました。続いて、12月までの期間に気球連隊での実用試験が行われ、前代の九五式や九一式の偵察気球と比較しても優れた性能を持っていたため、1938年には正式に採用されることとなりました。この際、正式名になる前は「九七式偵察気球」という仮称が使われました。

実戦での初使用は1939年に発生したノモンハン事件であり、この時に使用された気球観測はソ連軍の航空機による攻撃により多くの被害を受けました。この出来事をきっかけに、以降は気球による観測から航空機主導の観測方式にシフトすることになりました。それでも、九八式は長く主力の偵察手段として使われ続け、特に1941年のコレヒドール要塞攻撃後も1944年まで利用されました。

設計面では、九八式の気嚢は水素を充填し、裏面にはゴム引きの木綿布が使用され、形状は魚形です。可変容積式の設計になっており、両側面の斜下部には網目状のゴム紐が施されています。後尾には3つの舵嚢が備えられ、取り付け部分は二重構造となって工夫されています。

運用に必要な器材としては、偵察用の双眼鏡や砲兵観測用眼鏡、七〇糎の気球写真機、九六式気球用電話機などが含まれています。加えて、気嚢と吊籠の間には緊急用の落下傘が装備されています。気球の運用にはこれらの本体だけでなく、自動貨車ベースの繋留車や水素缶車、気球車、野外用発電機などの周辺機材も必要です。これら地上設備の製作は、気球本体を藤倉工業が、繋留車を三菱重工業が担当しました。

直接偵察機の運用が普及する中、九八式の標準昇騰高度は従来の偵察気球よりも抑えられる傾向にありました。

諸元

• - 全長: 26.45 m
• - 最大中径: 7.40 m
• - 全高: 16.82 m
• - 気嚢総容積: 780 m³
• - 自重: 310 kg
• - 標準昇騰高度: 1,000 m (乗員1名時)、800 m (乗員2名時)
• - 搭載量: 150 kg (乗員1名時)、180 kg (乗員2名時)
• - 繋留索全長: 1,300 m

偵察用装備:

• - 八九式双眼鏡または一〇〇式双眼鏡
• - 砲兵観測用眼鏡
• - 七〇糎気球写真機

乗員: 2名

このように、九八式偵察気球は当時の偵察手段として多くの活躍を見せ、その技術は後の気球開発にも影響を与えました。

もう一度検索