九五式偵察気球

九五式偵察気球

概要

九五式偵察気球は、大日本帝国陸軍に採用された繋留型の偵察気球です。本気球は、特に行軍中の優れた機動性を発揮するよう設計されており、敵の動向を把握するための重要な手段として利用されました。1935年12月に仮制式制定され、その後の試験を経て1936年4月に制式採用されたのが始まりです。

歴史的背景

この気球は、日中戦争（支那事変）の間に独立気球第2中隊と第3中隊に配備され、さまざまな戦闘に参加しました。1937年8月24日の臨時動員から1940年8月の復員までの間、第二次上海事変や南京攻略戦、江陰攻撃、徐州作戦、武漢作戦、南昌作戦、宜昌作戦などにおいて重要な役割を果たしました。特に、射撃の観測や情報収集に加え、敵軍に対する心理的圧力を与える効果もありました。さらに、1939年のノモンハン事件にも関与していたとされています。

設計特性

九五式偵察気球は、水素を充填した気嚢が魚の形状をしており、両側面には斜下部に糸目網、後尾には3つの舵嚢が備えられています。このデザインは可変容積式であるため、安定性が高く、最大風速25 m/sにも耐えられる能力があります。また、吊籠には有線電話や落下傘、保温装置など、運用に必要な器材を完備しています。

従来の九一式や九三式と比較すると小型化されており、乗員は1名とされ、運用に関わる地上要員や車両もともに削減されています。運用するための人員は62名で、これにより障害物を通過する際の行軍中の問題が緩和されました。しかし、乗員数が減少したことに伴い、偵察活動における技術的なスキルがより一層求められることとなりました。日中戦争中には2人での運用も行われました。また、陣地進入後の昇騰や降下性能も向上している点が特徴です。

地上支持器材

九五式偵察気球の運用には、繋留車や水素缶車といった周辺器材が必要です。特に繋留車は九四式六輪自動貨車を基にして製作されており、その自重は4,600 kgに達します。気球は接続された状態で移動が可能であり、徐州作戦の際には貨車に搭載した状態での昇騰移動も行われました。

諸元

以下は九五式偵察気球に関する主要な諸元です。

• - 全長：31.2 mまたは26.45 m
• - 最大直径：7.32 mまたは7.24 m
• - 全高：16.82 m
• - 気嚢容積：750 m³または730 m³
• - 自重：340 kg
• - 最大昇騰高度：1,000 m（乗員1名時）
• - 搭載量：120 kg（乗員1名時）
• - 繋留索の全長：約1,300 m
• - 乗員数：1 - 2名

九五式偵察気球は、その技術的革新と運用の柔軟性により、歴史的な戦闘において重要な役割を果たしました。

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