九八式直接協同偵察機

九八式直接協同偵察機（きゅうはちしきちょくせつきょうどうていさつき）は、大日本帝国陸軍が使用した偵察機です。この機体は、主に前線の地上部隊との連携を強化するために開発され、偵察や観測といった任務に加え、場合によっては武装を用いた地上攻撃も行う能力を兼ね備えています。試作名称はキ36で、連合軍の識別名はIda（アイーダ）とされています。

開発経緯

この機体の開発は、満洲事変の後に急速に進みました。当時の陸軍は、拡大する大陸戦線に適応するために、地上部隊との緊密な協力を求めていました。このため、近距離での偵察を行える直接協同偵察機（直協機）の必要性が高まりました。テスト・パイロットである藤田雄蔵少佐を中心とした技術陣がこの構想を推進し、短距離離着陸能力、偵察及び地上制圧のための安定した飛行特性、整備性の高さなどが要求されました。

1937年、陸軍は従来の偵察機の後継機としてキ36の開発を立川飛行機に指示しました。立川は初めて全金属製の機体を製作しましたが、その設計は非常にスムーズに進行し、同年4月には初飛行を果たしました。テストの結果は良好で、1938年には正式に九八式直接協同偵察機として採用されました。

機体の特徴

九八式は、単発の全金属製セミモノコック構造を有し、主翼は低翼単葉の形式を採用しています。外翼前縁には14.5度の後退角が付けられ、これにより優れた下方視界を得ることができました。また、後部座席は主翼後縁と機軸が交差するポイントに配置され、地上対象物の位置を正確に伝える役割を果たしました。

この機体は、限られた条件下で翼端失速の傾向があるため、設計上の対策が必要でした。最初は固定スラットが装備されていましたが、後に翼端捩じり下げに変更され、全体の操縦安定性が向上しています。また、スプリットフラップが搭載されており、離着陸能力の向上にも寄与しています。

生産と運用

生産は1937年11月に始まりましたが、1940年には一度停止しました。しかし、前線部隊からの再生産の要望が強く、太平洋戦争が始まると緊急生産機種に指定され、1942年から再び生産が再開されました。最終的には1944年まで生産が続き、総生産機数は1,333機に達しました。

この機体は、操縦の容易さと高い安定性、信頼性から前線の部隊に高く評価され、多様な任務に活用されました。偵察や指揮、連絡、地上攻撃に加え、特攻機としても使用されたケースもあります。九八式は、その扱いやすさから練習機としても改造され、『九九式高等[[練習機]]』として制式採用されました。

現存する機体

現存する九八式の完全な機体は存在しませんが、九九式高練は中国人民革命軍事博物館とタイの空軍博物館に1機ずつ展示されています。日本国内では、沖縄近海で発見された機体の部品が展示されています。

仕様

- 全長: 8.00 m
- 全幅: 11.80 m
- 全高: 3.30 m
- エンジン: 日立ハ13甲
- 最大速度: 349 km/h
- 武装: 固定及び旋回式機関銃

このように九八式直接協同偵察機は、日本陸軍の航空戦力において非常に重要な役割を果たしました。

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