九八式4屯牽引車

九八式四屯牽引車「シケ」について

九八式四屯牽引車「シケ」は、1938年に日本の大日本帝国陸軍において正式に採用された砲兵トラクターです。この車両は、主に火砲を効率的に牽引するために設計されています。日本の国情からは強力な牽引馬を生産することが難しく、列強諸国に遅れをとらないために、早い段階から火砲牽引車の開発に力を入れていました。

歴史的背景

1920年代の初頭には、自動車牽引による部隊が設立され、様々なトラクターの性能を評価する取り組みが行われました。1935年に制式化された機動九〇式野砲は、最大速度が45 km/hで、牽引車輌として本車が採用される運命にありました。この部分において、九八式四屯牽引車はその必要性に応じて進化を遂げたのです。

設計と特徴

九八式四屯牽引車は、前任の九四式四屯牽引車の運用経験を基に開発されており、主に信頼性の向上を目指しています。エンジンは改良され、空冷式のガソリンエンジンが搭載されています。また、九五式軽戦車と同様の懸架装置や履帯を採用することで、衝撃に強く、厳しい条件下でも安心して使用できる設計になっています。

この牽引車の設計には、実戦での使用に対する堅実な配慮がされており、発動機の冷却効果も高めています。特に、火砲の射撃準備時間を短縮するための機動性は高く評価されており、機械化歩兵部隊との同時移動を可能にするための優れた特性を有しています。

機能と運用

当車の運用においては機動九〇式野砲を牽引する場面が多く、砲と接続した後方には弾薬箱が2箱配置され、計8発の弾薬を持ち運ぶことができます。さらに、弾薬車も牽引することができ、これにより44発と信管を搭載することが可能でした。乗車人員としては、車長や砲兵員、弾薬手が配置されています。

九八式四屯牽引車は全装軌式で、前に誘導輪、後に起動輪があり、片側には転輪を5個装備するなど、動きに柔軟性を持たせています。履帯幅は25 cmで、接地長は2.06 m、最低地上高は31 cmとされ、トラクション性能にも優れています。これにより、凸凹のある地形でも安定した走行が可能です。

性能

また、この牽引車は最大91馬力を出力し、燃料を160リットル搭載することができるため、速度は最大40 km/hに達します。牽引能力は3.65 tであり、厳しい坂道でも登坂が可能です。さらに、徒渉水深能力も50 cm程度あるため、荒れた地形を通過することができるという優れた性能を持っています。

結論

九八式四屯牽引車「シケ」は、その優れた機動性と信頼性により、実戦部隊でも広く利用されました。しかしながら、日本陸軍の予算や工業水準の限界から、常に数量不足に悩まされていました。この一連の流れは、当時の日本における軍事技術の発展の過程を示しているのです。

もう一度検索