九〇式野砲

九〇式野砲について

九〇式野砲（きゅうまるしきやほう）は、1920年代後半から1930年代初頭の間に開発された大日本帝国陸軍の重要な野砲です。特に、機械化牽引を目的とした派生型である機動九〇式野砲についても注目されます。この砲は、第二次世界大戦中に帝国陸軍の主力野砲として、改造三八式野砲や九五式野砲と共に使用されました。

開発の背景

九〇式野砲の開発は、日露戦争後、主力野砲が1907年に採用された三八式野砲から始まりましたが、第一次世界大戦の影響で火砲の技術は急速に進化しました。この結果、旧式の三八式野砲は徐々に性能が劣ってきたため、陸軍は新型野砲の導入を急ぐこととなりました。しかし当時、日本は十分な技術力を持っていなかったため、フランスのシュナイダー社が提供した75mm野砲をモデルに、新型野砲の設計が始まりました。

陸軍はシュナイダー社との交渉を経て、その技術を取り入れ、独自の改良を加えた九〇式野砲を1932年に制式化しました。この新型砲は、特に中国大陸での運用を考慮し設計されたもので、流線形の砲身と効率的な駐退復座機を持ち、射程や精度の向上が図られました。

技術的特徴

九〇式野砲の特筆すべき特徴は、次のような技術的要素です。

• - 水圧式自己緊縮方式により砲身の強度が増強。
• - 砲口制退器による射撃時の反動の低減。
• - 空気式駐退復座機により反動吸収が改善。
• - 開脚式砲架と打ち込み式駐鋤の導入により、操作性や射撃角度の限界が向上しました。

ただし、重量が大きすぎるとの意見もあり、機動性を重視した新型野砲の研究が始まることになります。実際、九〇式野砲はその長射程が評価され、多くの部隊で使用が進められました。

実戦での活躍

九〇式野砲は1931年の満州事変で実戦投入され、その射程の長さが戦闘での大きな利点となりました。この成功により、九〇式野砲の生産が一層進むこととなりました。さらに1941年に勃発した太平洋戦争では、多くの戦場でその威力を示し、硫黄島や沖縄戦でも多くの火力支援を行いました。

この砲は戦車砲としても転用されることになり、一式七糎半自走砲や三式七糎半戦車砲などとして応用されました。これにより、九〇式野砲の技術が新たな兵器に受け継がれていくこととなりました。

生産と現存砲

九〇式野砲は、約200門が生産されたと言われています。この中には、機動九〇式野砲が約600門含まれており、多くの部隊で使用されました。現在、アメリカの兵器博物館や中国の軍事博物館で、比較的良好な状態の九〇式野砲やその派生型を見ることができます。

結論

九〇式野砲は、その技術的な進化と戦場での実績を通じて、陸軍の主要な火砲システムとして重要な役割を果たしました。機動性に関する課題はあったものの、長射程と高い貫徹力を持つこの砲は、戦局を大きく左右した歴史的な武器でした。

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