九大フィルハーモニーオーケストラ

九大フィルハーモニー・オーケストラ

九州大学フィルハーモニー・オーケストラ（通称：九大フィル）は、九州大学を中心とした福岡県内の学生によって構成される学生オーケストラです。その歴史は古く、日本国内のアマチュアオーケストラの中でも最古級の団体として知られています。九州交響楽団が発足する以前は、福岡のみならず九州全体の音楽界をリードする存在でした。

歴史

創立と初期

1909年、九州大学の前身である京都帝国大学福岡医科大学の教授、榊保三郎を中心にフィルハーモニー会として発足しました。1911年には、九州帝国大学の設置に伴い「九大フィルハーモニー会」と改称。この頃から、九州の音楽文化を牽引する存在としての活動が始まりました。

黎明期と試練

1923年には、大阪、東京、名古屋での演奏旅行を計画しましたが、北白川宮成久王の逝去に伴う歌舞音曲停止令により頓挫しました。しかし、翌1924年には、摂政宮殿下御成婚奉祝音楽会にて、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」第4楽章を日本で初めて演奏。この際、榊保三郎は第9番のメロディーに文部省撰の「皇太子殿下御結婚奉祝歌」の歌詞を載せて演奏するという大胆な試みを行いました。

1926年には、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」をSPレコードに録音。これは、日本における最古級の管弦楽録音の一つと考えられています。

戦後の再建と発展

第二次世界大戦によって一時的に活動を中断しましたが、1947年には活動を再開。石丸寛や荒谷俊治といった指揮者を迎え、九州交響楽団をはじめとする数多くの音楽団体の礎を築きました。1959年には、地域音楽文化の育成に大きな貢献をしたとして西日本文化賞を受賞。

さらなる飛躍

1966年には、テレビ番組「題名のない音楽会」に出演し、その名を全国に広めました。1975年には、当時新進気鋭の指揮者であった堤俊作を指揮者に迎え、その後30年以上にわたる蜜月関係を築きます。1984年には中国特別演奏会を上海で開催、1998年には全日本学生オーケストラ大会で大賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ました。

創立100周年と現在

2009年には創立100周年を迎え、記念演奏会ではアクロス福岡シンフォニーホールが満席になるなど、その影響力の大きさを改めて示しました。この功績が認められ、福岡市民文化活動功労賞を受賞。2014年には、チェンバロ奏者・オルガン奏者として知られる鈴木優人を初代ミュージック・アドバイザーに迎え、新たな転機を迎えました。九州大学伊都キャンパスへの移転を機に、さらに精力的な活動を展開し、2018年には第200回定期演奏会、そして約90年越しとなる初の東京公演を開催しました。

日本初演作品

九大フィルは、数々の作品を日本で初めて演奏しており、日本のクラシック音楽史においても重要な役割を果たしています。

交響曲第40番／モーツァルト（1919年）
序曲「静かな海と楽しい航海」／メンデルスゾーン（1919年）
交響曲第1番／ベートーヴェン（1919年）
交響曲第4番「イタリア」／メンデルスゾーン（1922年）
交響曲第4番／シューマン（1926年）
交響詩「夏の田園」／オネゲル（1927年）
序曲「南国にて」／エルガー（1975年）
新大学祝典序曲／広瀬量平（2003年）

稀少資料の発見

2018年12月には、九州大学文書館にてハイドンの交響曲第104番「ロンドン」の楽譜が発見されました。この楽譜は、羽衣管弦楽団から譲り受けたもので、1917年12月7日に天王寺公会堂で演奏されたことが判明しました。また、1924年の摂政宮殿下御成婚奉祝音楽会で使用されたベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章の楽譜も同時に発見されました。

まとめ

九大フィルハーモニー・オーケストラは、100年以上の歴史を持つ学生オーケストラであり、その活動は日本のクラシック音楽文化の発展に大きく貢献しています。今後も、その伝統と革新を両立させながら、新たな音楽の歴史を刻み続けることが期待されます。

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