荒谷俊治

荒谷俊治（あらたに しゅんじ）

日本の指揮者であり、日本指揮者協会の元会長であった荒谷俊治は、1930年4月1日に広島県東広島市で生まれ、2020年1月1日に89歳で生涯を閉じました。

生涯と業績

荒谷は福岡県中学修猷館、旧制福岡高等学校を経て九州大学に進学。法学部と文学部を卒業しました。大学在学中から九大フィルハーモニーオーケストラや福岡合唱協会で指揮を始め、石丸寛に指揮法を、高田三郎に作曲を師事しました。

1959年に東京放送合唱団を指揮してデビューし、1968年には東京フィルハーモニー交響楽団の指揮者に就任。1969年には文化庁派遣在外芸術研修員としてアメリカに留学し、ジョージ・セルのもとで研鑽を積みました。1970年にはクリーヴランド管弦楽団を指揮し、その才能を世界に示しました。その後、東京バレエ団のヨーロッパ公演に招かれ、ボリショイ劇場管弦楽団やルクセンブルク放送交響楽団など、ヨーロッパ各地のオーケストラを指揮しました。

荒谷は、日本の音楽文化の発展にも尽力しました。1966年からは日本オペラ協会と協力して『山椒太夫』や『春琴抄』などの創作オペラを上演し、日本音楽集団と協力して三木稔や廣瀬量平などの作品を手掛け、日本の伝統音楽に基づいた新しい音楽の創造に情熱を注ぎました。

1974年には名古屋フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者に就任し、同楽団を日本有数の地方オーケストラへと育て上げました。また、東京リーダーターフェル、東京コールフェライン、福岡コールフェライン、福岡OBフィル、桐蔭学園第九オーケストラ、町田フィルハーモニー交響楽団、町田フィルハーモニー合唱団など、アマチュア音楽家の育成にも力を入れました。1985年から毎年開催されている国技館5000人の第九コンサートでは、1988年、2004年、2007年の3回、指揮を務めました。

2018年には、長年の地域音楽への貢献が認められ、町田市で4人目の名誉市民に選ばれました。海外での演奏活動も積極的に行い、アメリカ、ソ連、フランス、スイス、ドイツ、東南アジア、エジプト、中国、南米、韓国など、世界各地で指揮をしました。ウィーン楽友協会ホール、シドニー・オペラハウス、アムステルダム・コンセルトヘボウなど、世界的に有名な音楽ホールでも指揮をしています。

2003年からは、山田耕筰、齋藤秀雄、朝比奈隆に次ぐ第4代日本指揮者協会会長を務め、日本の音楽界に多大な貢献をしました。

2020年1月1日、心不全のため、東京都内の病院で89年の生涯を終えました。

エピソード

1955年にワルシャワで開催された世界青年学生祭典に日本代表として参加した際、荒谷はポーランドの民謡『シュワ・ジェヴェチカ』を採譜しました。後にこの曲は、東大音感合唱団のメンバーによって日本語の歌詞がつけられ、『森へ行きましょう』として広く知られるようになりました。

荒谷俊治は、その音楽への情熱と才能、そして後進の育成への貢献を通じて、日本の音楽文化に大きな足跡を残しました。

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