石丸寛

石丸寛：音楽と美術の才能が融合した巨匠

石丸寛（いしまる ひろし）は、1922年2月19日に中国の青島で生まれ、1998年3月23日にこの世を去った、日本の指揮者、作曲家です。幼少期から音楽と美術に親しみ、その才能は多岐にわたりました。

生い立ちと芸術への目覚め

幼少期を中国で過ごした石丸は、音楽と美術に囲まれた環境で育ちました。父親の影響で六朝文化に触れ、ピアノやヴァイオリン、油絵を学びました。旧制中学時代にはブラスバンド部に所属する傍ら、中村八大らとバンドを結成するなど、音楽活動にも積極的に取り組みました。1938年に帰国し、東京の玉川学園中学部に転入、コーラス部長や彫刻にも打ち込み、1944年に文化学院大学部芸術科を卒業しました。美術は今泉篤男、脇田和、岡鹿之助に師事し、管弦楽法と指揮法は山田一雄に師事しています。

戦争と音楽への転身

第二次世界大戦で出征した石丸は、終戦後に福岡で復員し、画家としての活動を再開します。火野葦平が主宰する九州文学に参加し、演劇やバレエの美術、音楽を担当しました。1948年には、放送管弦楽団と専属契約を結び、1953年には九州交響楽団を設立し、初代常任指揮者に就任しました。福岡の音楽文化の発展に大きく貢献し、1995年には同楽団の音楽監督と常務理事を兼任しました。

指揮者としての華々しいキャリア

1952年、東京交響楽団を指揮し、楽壇デビューを果たしました。その後、ブラームスの連続演奏会などで注目を集め、1954年にはヘルベルト・フォン・カラヤンからレッスンを受けるという貴重な経験もしています。画家を志していた石丸は、終戦を機に音楽の道へ転身、アカデミックなコンサート活動を展開しました。

クラシック音楽の普及に貢献

石丸は「日本のバーンスタイン」と呼ばれるほど、企画、作曲、編曲、指揮に才能を発揮し、わかりやすい解説を交えながらクラシック音楽の普及に努めました。1964年には、黛敏郎、藤田敏雄らと共に、自ら企画したTV音楽番組「題名のない音楽会」を立ち上げ、10年間指揮を務めました。1973年からは20年間続いた無料の「ゴールドブレンドコンサート」では、地方交響楽団の育成に尽力し、日本各地にクラシック音楽ファンを増やしました。また、青少年向けのコンサートにも力を注ぎ、『クロネコ・ヤマト音楽宅急便おしゃべり好きなコンサート』ではレギュラーとして指揮活動を続けました。

地域と音楽を繋ぐ

地域に根ざした音楽活動を提唱した石丸は、1985年から10年間指揮を務めた国技館5000人の第九コンサートを機に、墨田区の音楽都市宣言や新日本フィルハーモニー交響楽団とのフランチャイズ契約にも貢献しました。この『5000人の第九』は国内外で話題を呼び、ドイツ、中国、アメリカでも公演を成功させました。

多彩な才能

石丸は、料理番組や『日曜美術館』、トーク番組、ドラマなどにも出演し、その多才ぶりを発揮しました。学生時代から美術にも才能を発揮し、国展に連続入選しており、指揮者となってからも個展を開催しています。また、コンサートのポスターやプログラムなども自らデザインしました。

作曲家としての功績

作曲家としても才能を発揮し、オーケストラと合唱のための『すみだ三章』、合唱曲『風よ世界に伝えてよ』、ソプラノと男声合唱のための組曲『新川和江の3つの詩』など、数々の作品を残しています。また、『石丸寛合唱曲全集』も刊行されました。

その他の活動と晩年

著書には『それゆけオーケストラ!』や『棒ふりラプソディ』などがあります。東京交響楽団評議員、九州交響楽団音楽監督・常務理事、文化庁国民文化祭企画委員長及び実行委員、玉川大学客員教授などを歴任し、九州交響楽団永久名誉音楽監督にも就任しました。1997年に癌を告白し、翌年大腸癌で亡くなりました。

石丸の死の前年に行われた「石丸 寛・指揮生活45周年記念・東京交響楽団特別演奏会」は、その病状が報道されていたこともあり、文字通り命を賭けたコンサートとして話題になりました。その後も、亡くなるまで指揮台に立ち続けました。

音楽と美術を愛し続けた人生

一周忌には、回顧展『画家としての指揮者 – 石丸 寛 – 回顧展』が開催され、音楽家としての顔だけでなく、画家としての才能も改めて評価されました。石丸寛は、音楽と美術の両分野で才能を開花させた、稀有な存在であり、その功績は今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

主な作品

アルト・サックスと小管弦楽のための2章 (1959年)
交響合唱組曲「すみだ三章」(1991年)
三つの愛の歌
男声合唱のための組曲「きびだんご」
混声合唱組曲「子供の国」
男声合唱組曲「人間家族」
女声合唱組曲「稔り豊かに」
日本民謡・わらべうたによる児童・女声合唱曲集
福岡県立折尾高等学校校歌
千葉県立船橋旭高等学校校歌
コール・ロータスの歌

主な編曲作品

セレナード集
S.C. Foster's Album

出演番組

キャスター（文化放送）

著書

それゆけ!オーケストラ
棒振りラプソディ

外部リンク

* 指揮者列伝（石丸寛）

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