九試夜間水上偵察機

九試夜間水上偵察機（E10K）

九試夜間水上偵察機、通称E10Kは、大日本帝国海軍のために開発された試作飛行艇です。この機体は、愛知航空機が製造した九六式水上偵察機と並行して、川西航空機によって設計されましたが、最終的には不採用とされました。その背景には、設計上の課題と性能面での懸念が存在しました。

概要

E10Kは、前のモデルである六試小型夜間偵察飛行艇を代用するために計画されました。この機体は、長時間の飛行を可能にするための高い航続性能と安定性が求められました。川西航空機は1934年1月に社内名称「T型夜偵」として設計を開始し、同年9月10日に初飛行を達成しました。しかし、同年10月から海軍による正式な審査が始まると、機体の安定性や操縦性に関する問題が浮上しました。これらの問題は、エンジンの変更や機体の改良を試みても改善されず、最終的には不採用の判断が下されました。

不採用となったE10Kは、一機が九四式輸送機として海軍に納入され、主に輸送や連絡任務に使用されました。これにより、この機体の設計が全く無駄に終わったわけではなく、他の用途で活用されたのです。

デザインと性能

E10Kは、全長11.34メートル、全幅14.55メートル、全高4.40メートルのサイズを持ち、主翼面積は50.5平方メートル、無負荷時の重量は1,670キログラムで、最大全備重量は2,870キログラムです。この機体は、中島製の寿一型空冷星型9気筒エンジンを一基装備しており、離昇出力は600 hpに達します。最大速度は206 km/hであり、火力としては7.7mmの旋回機銃を一丁搭載し、乗員は3名を定員としています。

E10Kは、川西航空機にとって初の自社開発飛行艇であり、エンジンの配置や機体の構造において新たな試みがなされました。胴体部分は全金属製であり、九四式水上偵察機の金属製骨組みを流用して、複葉の主翼は羽布張りの設計を採用しました。特に、エンジンは上翼の中央に設置されているため、牽引式の構造が取られていた点が特徴的です。

結論

九試夜間水上偵察機E10Kは、大日本帝国海軍の航空戦力の一環として設計されたものの、実用面での課題が解決されずに不採用となりました。しかし、その試作と開発の過程は、後の航空機設計に多くの影響を与えたことは間違いありません。今後、航空史を振り返る際には、これらの試作機がもたらした教訓や進展を忘れてはいけないでしょう。

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