六試小型夜間偵察飛行艇

六試小型夜間偵察飛行艇（AB-4）

六試小型夜間偵察飛行艇、通称AB-4は、1930年代に日本海軍のために設計された単発の複葉飛行艇です。この機体は、夜間の偵察任務に特化して開発されましたが、最終的には採用されず、民間航空に転用されることとなりました。

開発の背景

1931年、日本海軍は当時の空軍機メーカーである愛知電機時計製造に対して、夜間偵察用の小型飛行艇の設計を指示しました。愛知は1920年代からも海軍機の製造に関与しており、その技術を活かして新たな飛行艇の開発に取り組むことになりました。

AB-4の名称は、「Aichi Biplane」の略で、金属で構成された艇体を持ち、複葉型の造形を特徴としています。エンジンには東京瓦斯電気工業が製造した6気筒の空冷直列エンジン「浦風」を採用し、推進方式で配置されました。

試作機の初飛行と評価

最初の試作機は1932年の5月に初めて空を飛びました。操縦性は全般的に良好だったものの、離水時や着水時には若干の操縦性の欠点が見受けられました。また、操縦士の視界に不満もあり、これらの点が後の設計に影響を与えました。しかし、評価を目的に5機の追加試作機が製作されました。

試験による評価の結果、六試小型夜間偵察飛行艇は最終的に採用には至りませんでした。新たな要求が見直された結果、1936年には同じ愛知社が製作した九六式水上偵察機が採用されることになりました。

民間への払い下げ

1935年、AB-4の試作機のうち3機が日本航空輸送研究所に払い下げられました。払い下げられた機体のうち1機は貨物機として使用され、残りの2機は日本飛行機によって旅客用に改造されました。改造の際、操縦席が機首の銃士席に移動し、5人または6人の客席が設けられたキャビンが追加されたほか、1機はエンジンを高出力のネイピア・ライオンに換装されました。

その後、日本航空輸送研究所ではAB-4飛行艇を利用した定期運行や観光飛行が行われました。特に観光目的での運用は多くの人々に利用され、当時の日本の航空旅行を支えました。しかし、1937年5月27日には堺市の工場の煙突に衝突する事故が発生し、5人が命を失う悲劇もありました。

諸元

AB-4の基本的な諸元は以下の通りです：

• - 乗員：3名
• - 全長：9.75 m
• - 翼幅：13.50 m
• - 全高：3.94 m
• - 翼面積：47.1 m²
• - 自重：1,610 kg
• - 全備重量：2,350 kg
• - エンジン：1 x 瓦斯電「浦風」350 hp
• - 最大速度：164 km/h
• - 巡航速度：113 km/h
• - 失速速度：84 km/h
• - 2,800 mまでの上昇時間：60分50秒

このように、六試小型夜間偵察飛行艇AB-4は、日本の航空史において重要な役割を果たす機体として位置づけられています。しかし、運命的には試作に終わり、その後は民間に受け入れられたことが、歴史的な視点からも興味深い点です。

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