乱れからくり

乱れからくり

『乱れからくり』は、1977年に幻影城から刊行された泡坂妻夫による推理小説です。巧妙なトリックと、複雑に絡み合った人間関係が織りなすミステリーは、多くの読者を魅了しました。1978年には第31回日本推理作家協会賞を受賞、同年の直木賞候補にも選ばれるなど、高い評価を得ています。

本作は、1979年に松田優作主演で映画化、1982年には火曜サスペンス劇場でテレビドラマ化もされており、小説の枠を超えて幅広い層に親しまれています。

あらすじ

物語は、主人公の勝敏夫が、ひょんなことから経済関係の興信所で働くことになり、大手玩具メーカー・鶴寿堂の奇妙な依頼を調査することから始まります。鶴寿堂の社長である馬割鉄馬は、屋敷に隠された財産を巡る骨肉の争いに巻き込まれており、彼の周囲では不可解な連続殺人事件が発生します。

勝は、金沢を舞台に、事件の真相を追ううちに、鶴寿堂の創業者である馬割作蔵と、江戸時代の発明家・大野弁吉との関係にたどり着きます。そして、屋敷に仕掛けられた巧妙なからくりと、複雑な人間関係が絡み合い、意外な真犯人が浮かび上がってくるのです。

映画

松田優作が主人公の勝敏夫を演じた映画版は、原作の雰囲気を忠実に再現しつつ、映像ならではの表現を加えて、よりスリリングな展開となっています。野際陽子演じる宇内舞子、岸田森演じる馬割鉄馬など、個性的なキャラクターたちが物語を彩ります。

テレビドラマ

火曜サスペンス劇場で放送されたテレビドラマ版は、円谷プロダクションが制作を手掛け、特撮技術を駆使した演出が話題となりました。古城都が宇内舞子を演じ、柴田恭兵が勝敏夫を演じるなど、映画版とは異なるキャスティングで、新たな魅力を引き出しています。

小説の魅力

『乱れからくり』の魅力は、何と言ってもその緻密なトリックと、予想を裏切る展開にあります。泡坂妻夫ならではの独特な文体と、ユーモア溢れる描写も、作品をより魅力的なものにしています。また、金沢の古い街並みや、からくり人形といった日本の伝統文化が、物語の雰囲気を盛り上げています。

読者は、勝とともに事件の謎を解き明かす過程で、人間の欲望や、心の闇に触れることになります。そして、最後に明かされる真犯人の正体は、読者に深い衝撃を与えるでしょう。

書誌情報

『乱れからくり』幻影城〈幻影城ノベルス〉、1977年12月25日
『乱れからくり』角川書店〈角川文庫〉、1979年4月25日 ISBN 9784041461013
『乱れからくり』双葉社〈双葉文庫〉、1988年2月1日 ISBN 9784575501643
『乱れからくり 日本推理作家協会賞受賞作全集33』双葉社〈双葉文庫〉、1997年11月1日 ISBN 9784575658354
* 『乱れからくり』東京創元社〈創元推理文庫〉、1993年9月12日 ISBN 9784488402129

まとめ

『乱れからくり』は、推理小説ファンはもちろん、ミステリーに興味があるすべての人におすすめできる傑作です。緻密なトリックと、予想を裏切る展開、そして、日本の伝統文化が織りなす独特な世界観を、ぜひ堪能してください。

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