乾安丸 (1942年)

乾安丸（初代）について

乾安丸は、乾汽船が建造した貨物船で、太平洋戦争中に日本海軍に徴用され、輸送船として運用された後に撃沈された悲劇の船です。本船は、乾汽船が保有した最初の「乾安丸」であり、後に建造された同名の二代目とは区別されます。ここでは、初代「乾安丸」の生涯について詳しく解説します。

建造から徴用まで

乾安丸は、1941年（昭和16年）2月21日に播磨造船所相生工場で起工されました。建造番号は299番船です。1942年（昭和17年）3月30日に進水し、同年5月30日に竣工しました。その後、民間船として運航されていましたが、同年12月4日には西行第56船団に加入し、青島へ向けて出航しています。

海軍徴用と輸送任務

1943年（昭和18年）6月18日、乾安丸は日本海軍に徴用され、呉鎮守府所管の海軍一般徴用船（雑用船）となりました。徴用後は、軍需物資や兵員などを輸送する任務に従事することになります。徴用直後には、ウェーク島防御用の兵器や弾薬、軍用郵便物などを積載し、芝浦、横須賀などを経由してトラック島へ向かいました。その後もクェゼリン、ウェーク島などを転々と輸送任務に就いています。

ウェーク島への輸送

7月には、トラック島からクェゼリンを経由してウェーク島への輸送任務に就きました。ウェーク島では、軍需物資や人員を降ろし、新たな人員や郵便物を積載してクェゼリンへ戻るなど、往復の輸送を担いました。

横須賀への帰還

8月には、クェゼリンからトラック島を経由して横須賀へ帰還しました。横須賀では、軍需物資や兵員を降ろし、新たに兵器、弾薬、糧食、建築資材などを積載しました。この際、800名を超える便乗者を乗せています。

サイパンへの輸送

9月には、横須賀からサイパンへの輸送任務に就きました。サイパンでは積載物を降ろし、現地のマンガン鉱、リン鉱石などを積載しました。その後、再び横須賀へ戻り、天然資源以外の積荷を降ろしました。

南方への輸送

10月には佐世保を経由して馬公、高雄、サンジャック、セレターなど南方各地への輸送任務に従事しました。この間、多くの兵員や物資を輸送しています。

国内輸送

12月以降は、マニラ、高雄を経由して国内輸送に従事しました。門司、徳山、若松、呉、横浜などを回り、物資や人員を輸送しました。

パラオへの輸送

1944年2月以降は、サイパン、グアムへの輸送任務に就き、その後パラオへの輸送任務に就きました。パラオへ向かう途中には、パラオ大空襲の影響でサイパンへ一時退避を余儀なくされましたが、その後パラオに到着し、パラオ、ヤップ、サイパン間の輸送に従事しました。

沈没

1944年5月3日、乾安丸はサイパン島北西沖でアメリカ潜水艦サンドランスの攻撃を受け、被雷・沈没しました。この攻撃により、船員10名と便乗者39名が戦死しました。

乾安丸の最期

乾安丸は、太平洋戦争における日本の輸送作戦を支えた重要な一隻でした。その生涯は、建造から徴用、そして沈没という悲劇的な結末を迎えることになりましたが、多くの物資と人員を運び、戦争遂行に貢献しました。その歴史は、後世に語り継がれるべきものです。

参考資料

アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）
海軍省
逓信省、運輸通信省
乾汽船『乾汽船60年の歩み』
駒宮真七郎『戦時輸送船団史』
全日本海員組合『戦没した船と海員の資料館』
船舶運営会『喪失船舶一覧表』
播磨造船所『播磨50年史』

もう一度検索