亀川町

大分県速見郡亀川町：白亀伝説と温泉郷の歴史

大分県別府市に含まれる地域、かつて速見郡に存在した亀川町は、豊かな自然と歴史に彩られた町でした。別府湾に面し、神輿山を望む柴石川の下流左岸に位置していました。その歴史、産業、交通、そして地名にまつわる物語を紐解いていきましょう。

町の成立と変遷

亀川町の起源は、明治22年（1889年）に町村制施行に伴い、速見郡の亀川村、内竈村、野田の3村が合併して成立した御越村に遡ります。 御越という地名は、内竈地区にそびえる神輿山（御越山）に由来しています。その後、明治34年（1901年）に町制を施行し、御越町となりました。そして大正14年（1925年）、町名は亀川町へと改称されました。この地名の由来は、承和年間、この地で発見された白亀が朝廷に献上されたという、白亀伝説にまつわるものです。昭和10年（1935年）9月4日、亀川町は別府市に編入され、その歴史に幕を閉じました。

産業と交通の発展

亀川町では、農業が主要な産業の一つでした。また、七島藺（しちとういぐさ）の生産も盛んであり、特産品として知られていました。さらに、別府温泉に含まれる亀川温泉は、町の重要な観光資源として発展を遂げました。

交通面では、明治44年（1911年）に国有鉄道大分線（現・日豊本線）が別府まで開通し、亀川駅が開設されたことが大きな転換点となりました。これにより、町の交通の便は飛躍的に向上しました。その後、昭和5年（1930年）には、別府大分電鉄（後の大分交通別大線）の電車軌道が海岸部から亀川（新川）まで延伸され、大分市とのつながりが強化されました。鉄道の開通は、亀川町の経済発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

地名と伝説

亀川町の地名は、先に述べた白亀伝説に由来しています。古くから伝わるこの伝説は、町のアイデンティティを象徴する存在でした。一方、御越という旧町名に使われた「御越」は、神輿山を指す言葉であり、自然と深く結びついた地名であると言えます。これらの地名からは、亀川町の人々が自然と歴史を大切にしながら暮らしてきた様子が伺えます。

参考文献

角川日本地名大辞典 44 大分県
『市町村名変遷辞典』東京堂出版、1990年

まとめ

亀川町は、短いながらも、農業、七島藺、温泉を基軸とした独自の産業と、鉄道開通による交通網の発展、そして白亀伝説に代表される歴史と文化を育んできました。別府市に編入された現在も、その歴史と文化は別府市の一部として脈々と受け継がれていると言えるでしょう。 亀川町の歴史を知ることは、別府市の歴史を理解する上で重要な要素となるでしょう。

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