二二諸国

二二諸国（バイセ・ラージヤ）

二二諸国（ネパール語: बाइसे राज्य, Baise Rajya）とは、かつてネパール西部のカルナリ地方、具体的には現在のカルナリ県、セティ県、ベリ県といった地域に分立していた多数の小国家群を指す歴史的な呼称です。これらの国々は、東隣のガンダキ地方に存在した二四諸国と並び称され、ネパールの統一時代以前の複雑な政治状況を象徴する存在でした。

歴史的背景

この小国家群が生まれたのは、かつてネパール西部を支配した強大なカサ王国が滅びた後のことです。カサ王国を打ち破ったラースコート地方の支配者マラヤ・ヴァルマーは、獲得した中部カルナリ地方の領地を自身の息子たちに分け与えました。この時分割されたのが、後のジュムラ、ジャージャルコート、ダイレク、ルクム、サリャーンといった地域であり、これが二二諸国の礎となったとされています。カサ王国の崩壊という大きな歴史的転換期を経て、この地域は独立した小規模な王国が林立する時代を迎えたのです。

名称の由来

『二二諸国』という名称の起源については諸説ありますが、有力な説の一つに、カルナリ地方の中心地であったジュムラ王国の住民が、自らを「22の峡谷に暮らす人々」と呼んでいたことに由来するというものがあります。この地域がジュムラを中心に歴史を紡いできたことから、この名が周辺の小国家群全体の呼び名として定着したと考えられています。なお、「二二」という数字は厳密な数を指すわけではなく、およそ20余りの国々を漠然と示すための概数として使われていたとされています。歴史研究家の佐伯和彦氏は、これが特定の正確な国数を示すものではないことを指摘しています。

主要な構成国

二二諸国として存在が確認されている主要な国家には、中心的な役割を果たしたとされるジュムラをはじめ、以下の国々が挙げられます。

ジャージャルコート
ダイレク
ルクム
サリャーン
バジャーン
ドーティ
アチャーム
ロルパ
ダーン
ピュータン

これらの国々は、それぞれの勢力圏を持ちながら、時に争い、時に同盟を結びつつ、カルナリ地方の歴史を彩りました。

二四諸国とネパール王国の統一

二二諸国がカルナリ地方に割拠していた頃、その東に位置するガンダキ地方には『二四諸国』と呼ばれる別の小国家群が存在していました。多くの面で二二諸国と共通の歴史的背景を持つこれらの国々と並び、この地域には数多くの小さな王国が林立していましたが、後にネパール王国を建国するゴルカ王国は、初期にはこの二四諸国に含められることは稀でした。

しかし、ゴルカ王国は徐々にその国力を増強し、勢力を拡大させていきました。プリトビ・ナラヤン・シャハ王の指導の下、ゴルカは統一国家形成へと動き出し、彼とその子であるプラタープ・シンハ・シャハ、さらに孫のラナ・バハドゥル・シャハの三代にわたる王たちは、巧みな戦略と武力を用いて二二諸国および二四諸国を次々と制圧し、自らの王国へと併合していきました。これにより、かつて独立した多くの小国家が分立していたネパール西部・中部は、一つの強力な王国のもとに統合されることとなり、二二諸国としての時代はその幕を閉じたのです。この統一の過程は、現在のネパールという国家の基礎を築く上で極めて重要な出来事となりました。

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