二人三脚

二人三脚（ににんさんきゃく）

二人三脚は、二人の参加者が互いの内側の足首を紐やバンドなどで固定し、歩調を合わせて一体となって走る陸上競技の一種です。主に学校の運動会や地域イベントなどで、チームワークや協調性を育む目的で実施されます。

概要とルール

競技は、二人一組となった参加者が、隣り合った足首を結束具でしっかりと結び、スタートの合図とともに協力してゴールを目指します。いかに二人の息を合わせ、スムーズに歩調を調整できるかが勝敗の鍵となります。結束具としては、かつては手に入りやすい紐などが使われましたが、近年ではゴム製のバンドや専用の二人三脚ベルトが広く用いられています。幼児向けの遊びとして紹介される際には、足に負担をかけないように紙テープのような、より切れやすい素材を用いることもあります。

単に速さを競うだけでなく、複数組が順番に走るリレー形式の「二人三脚競走」として行われることもあります。この場合、次の走者への引き継ぎは、一般的なバトンやたすきで行われるのが主流ですが、中には足を繋いでいる結束具自体を次のペアに渡し、それを使って再び足を結んでからスタートするというユニークな方式が採用されることもあります。また、二人でボールを蹴り運びながら進む「二人三脚転球」といった派生種目も見られます。

二人組だけでなく、三人が四つの足で走る「三人四脚」や、四人が五つの足で走る「四人五脚」など、三名以上の多人数で行われる形態もあり、参加人数によって名称が変わります。これは、より多くの人数で息を合わせる必要があり、難易度と協力性が増す競技となります。

比喩としての用法

競技としての二人三脚は、二人の人間が互いの足首を固定されながらも、協力し合って一つの目標に向かって進む姿が特徴的です。このことから、二人が力を合わせ、共同で困難な課題に取り組んだり、事業を進めたりする様子を「二人三脚で」と比喩的に表現することが一般的です。仕事やプロジェクト、人間関係など、様々な場面で、協力体制やパートナーシップの重要性を強調する際に用いられます。

歴史

日本における二人三脚の歴史は、意外にも古い記録が残っています。1874年に東京の海軍兵学校で開催された、日本初の運動会とされる「競闘遊戯」において、「蛺蝶趁花（てふてふはなをおふ）」という名称で、二人三脚に類する競技が既に実施されていたことが分かっています。また、その数年後、1878年に札幌農学校（現：北海道大学）で行われた運動会でも、正式な競技種目として二人三脚が組み込まれていました。これらの記録から、日本の近代スポーツの黎明期から、二人三脚が教育の一環や娯楽として導入されていたことが伺えます。

ギネス世界記録

二人三脚の派生形として、大人数で挑戦する種目に関するギネス世界記録も存在します。2010年11月28日に東京都渋谷区の代々木公園陸上競技場で行われたイベントでは、305人の参加者が隣り合う足首を結束具で繋ぎ、「305人306脚」の状態で50メートルを歩くことに成功しました。「multi-legged race（多脚競走）」という種目名で、この記録はギネス世界記録として認定されており、「虹の扉」という団体が記録保持者となっています。これは、文字通り多くの人々が一体となって目標を達成した事例であり、二人三脚が持つ協力の精神を象徴する記録と言えるでしょう。

二人二脚

二人三脚と混同されやすい競技に「二人二脚」があります。これは、二人の参加者が内側の足首を繋ぐ点では二人三脚と同様ですが、さらに内側の膝を後ろに曲げた状態で、跳ねるようにして前進する競技です。二人三脚のようにスムーズに歩くのではなく、独特のリズムで跳躍する必要があるため、二人三脚と比較してバランスをとるのが難しく、より高度な協調性と身体能力が要求されます。

その他の事例

競技や比喩表現としてだけでなく、極限的な状況下で二人が一体となる必要に迫られた例もいくつか知られています。明治時代、1886年に西川寅吉という人物が3度目の脱獄を試みた際、相方と共に足枷で鎖に繋がれたまま逃走しました。これも文字通りの二人三脚状態でしたが、相方が元人力車夫で足が速すぎ、西川と歩調が合わなかったために結局捕まってしまったという逸話が残っています。この話は、後にテレビ番組でも紹介され、二人三脚における歩調合わせの重要性を別の角度から示唆する事例となっています。

また、太平洋戦争中のアッツ島の戦いにおける玉砕戦では、日本兵が後退を許さないという覚悟を示すため、仲間同士で足首を縛り付けて突撃したという話も伝えられています。これは競技とは全く性質が異なりますが、二人が強制的に一体となり、共に進むという、ある種の二人三脚状態であったと言えます。