二個師団増設問題

二個師団増設問題

二個師団増設問題は、日露戦争後の日本において、陸軍の拡張問題が引き起こした政治的対立を指します。この問題は、明治後期から大正初期の情勢を背景にしており、特に第2次西園寺内閣が直面した困難を象徴しています。

背景

日露戦争が始まる1904年、陸軍は13個師団の体制でしたが、戦争を通じてその数は19個に増加しました。戦後、陸軍内ではロシアによる報復の懸念から、さらに増強が必要とされ、「平時25個師団、戦時50個師団」という極端な策が主張されました。これは山縣有朋らが推進したもので、海軍もアメリカを仮想敵国にした艦隊強化案を掲げており、これらが結びついて「帝国国防方針」が策定されました。この計画は内閣に対して軍の影響力を強調するもので、内閣は財政状況を理由に厳しい立場にありました。

陸軍と内閣の対立

1910年代初頭、陸軍は朝鮮半島に駐留する2個師団の増設を強く求めていましたが、内閣は財政難を理由に対応を拒否しました。この時期、内閣は軍の予算削減と財政再建を進めており、陸軍からの予算要求に対しては厳格に対応しました。内閣が日露協商に基づいて日露関係が安定していると認識する一方、陸軍は国際情勢の変化（シベリア鉄道の複線化や中国の不安定化）を考慮し、増強を主張しました。この対立は、陸軍の影響力が増す中で政治的対立を引き起こしました。

増設に向けた動き

1912年に入ると、陸軍内でも動きが活発化しました。石本新六陸相が急死し、上原勇作が後任に就任すると、彼は積極的な姿勢で2個師団増設を推進しました。しかし、内閣は依然として補正予算の削減を進めており、事態は膠着状態に陥りました。結局、陸軍と内閣の間には埋められない溝が生まれ、最終的に内閣は総辞職に追い込まれました。

政治的影響

この問題は、陸軍の増設が実現できないまま内閣を崩壊させた過程において、政党と藩閥・軍部の対立が浮かび上がりました。さらに、それに波及する形で第3次桂内閣が短期間で崩壊するなど、日本の政治情勢に大きな影響を与えました。

二個師団の設置

第一次世界大戦が勃発した1914年、大隈内閣はついに増設の必要性を認め、予算案を提出しましたが、政治的な力関係から否決されました。その後、衆議院選挙を経て、再び議論が行われ、1915年には予算案が通過します。これにより、第19師団と第20師団が設置され、陸軍の拡張は実現しました。

結論

二個師団増設問題は、陸軍の力がどのように政治に影響を与え、内閣との間での葛藤がどのように展開されるかを示す興味深いエピソードです。この問題はまた、軍事と政治の関係が日本の歴史においてどれほど重要であったかを示しています。

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