二塩化硫黄

二塩化硫黄（SCl₂）

二塩化硫黄は、元素の硫黄と塩素から構成される化合物であり、化学式は SCl₂ です。この化合物は、塩化硫黄 (II) とも呼ばれ、分子の構造は Cl-S-Cl となっています。結合角は 109.3°で、外見は赤色の液体です。

合成方法

二塩化硫黄は、一塩化硫黄（SCl）に塩素 (Cl₂) を作用させることによって得られます。“S₂Cl₂ + Cl₂ ⟶ 2 SCl₂” という反応式で表されるこの反応は、塩化鉄 (III) などのルイス酸を触媒として使用します。この反応は平衡反応であり、二塩化硫黄を放置すると再び塩素を放出して一塩化硫黄に戻る特性があります。そのため、純度の高い二塩化硫黄を合成する際には、五塩化リンなどの安定剤を用いて蒸留を行う必要があります。

反応特性

二塩化硫黄は、元素状や水素化物の硫黄と反応し、ポリスルフィド結合を持つ塩化物を生成します。この特性は、ゴムの加硫において有用です。反応式は「SCl₂ + nS ⟶ Cl-S_(n+1)-Cl」のように表されます。

また、二塩化硫黄と水素化物が反応すると、例えば「2 SCl₂ + H₂S₄ ⟶ Cl-S₆-Cl + 2 HCl」という反応が進行し、塩化チオニルの合成に寄与します。

さらに、−80℃で塩素を作用させると四塩化硫黄が生成されます。この化合物は、−31℃以上で逆反応を起こし分解します。この反応は「SCl₂ + Cl₂ ⟶ SCl₄」と示されます。

さらに、二塩化硫黄が三酸化硫黄（SO₃）と反応すると、塩化チオニル（SOCl₂）が生成されます。具体的には「SCl₂ + SO₃ ⟶ SOCl₂ + SO₂」という反応式で示される通り、工業的な塩化チオニルの合成法として広く用いられています。

水との反応は非常に激しく、塩化水素を生成します。この性質により、二塩化硫黄は取り扱いの注意が必要な化合物となります。

参考文献

Cotton, F. A.; Wilkinson, G. (1988). Adv. Inorg. Chem., 5th ed., Wiley, pp. 513.

外部リンク

• - 国際化学物質安全性カード 二塩化硫黄 (ICSC:1661) - 日本語版（国立医薬品食品衛生研究所による）及び英語版の情報。

もう一度検索