二川幸夫

二川幸夫（ふたがわ ゆきお、1932年11月4日 - 2013年3月5日）は、日本の建築写真家であり、建築批評家としても活躍した人物です。彼は、その卓越した写真技術と建築に対する深い洞察力で、日本の建築界に多大な貢献をしました。

大阪市に生まれた二川は、1951年に大阪市立都島工業高等学校建築科を卒業後、1956年に早稲田大学文学部を卒業しました。大学在学中には、建築史の教授であった田辺泰の勧めにより、日本の民家の撮影を開始しました。この活動が、彼のその後のキャリアを大きく方向づけることになります。

1957年から1959年にかけて、二川は美術出版社から『日本の民家』全10巻を刊行しました。このシリーズは、伊藤ていじの文章と二川の写真が組み合わされており、日本の伝統的な民家の美しさを捉えたものとして高く評価されました。1959年には、この著作により毎日出版文化賞を受賞し、彼の名前は広く知られるようになりました。

1970年、二川は建築書籍専門の出版社「A.D.A.EDITA Tokyo」を設立しました。この出版社からは、建築デザイン専門誌「GA JAPAN」など、多くの重要な建築関連書籍が発行されました。二川は、単に建築を記録するだけでなく、その魅力を伝え、建築文化を広めることにも情熱を注ぎました。

二川の功績として特筆すべきは、多くの優れた建築家の才能をいち早く見い出し、世に紹介したことです。安藤忠雄、妹島和世、ザハ・ハディドなど、現代建築を代表する建築家たちの初期の活動を、二川は積極的に取り上げました。また、坂茂は大学卒業後、二川のアシスタントとしてキャリアをスタートさせており、二川の影響力の大きさがうかがえます。

また、二川は、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの全作品集を出版するなど、海外の建築家の作品を日本に紹介することにも尽力しました。彼の活動は、日本の建築界に国際的な視野をもたらし、建築の多様性を理解する上で重要な役割を果たしました。

二川幸夫は、2013年3月5日に腎盂がんのため80歳で亡くなりました。彼の死は、日本の建築界にとって大きな損失となりましたが、彼の残した業績は、今後も長く語り継がれることでしょう。写真家として、出版者として、そして建築批評家として、二川幸夫は日本の建築界に深い足跡を残しました。

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