二川村 (岡山県)

岡山県真庭市二川地区：歴史、文化、そして未来への足跡

二川村は、かつて岡山県真庭郡に位置し、湯原町との合併を経て、現在の真庭市の一部となっている地域です。真庭市の北西部に位置する中山間地域であり、その歴史は古く、多くの出来事を経て現在に至ります。

二川村の沿革

1889年（明治22年）6月1日の町村制施行により、種村、粟谷村、藤森村、黒杭村、小童谷村の5つの村が合併し、二川村が誕生しました。村の名前は、粟谷川と藤森川が合流する地形に由来すると言われています。合併当初の人口は1740人、戸数は370戸でした。初代村長には、前小童谷村戸長の池田三千造が選ばれました。

二川村の歴史

二川村以前

二川地域は出雲街道が近いため、古くから出雲伯耆地方との交流がありました。砂鉄の産出量が多く、地名や屋号にその名残が見られます。また、銅の産出もありました。種村、粟谷村、藤森村、黒杭村、小童谷村の5つの村は、もともと備前国、後に美作国真島郡建部郷に属していました。戦国時代には高田城主三浦貞久の支配下となり、種村は建明庄、残りの4村は絵加新庄に属しました。三浦貞久の後、毛利氏の領地となり、藤森村の飯山城で尼子氏と戦っています。戦乱の時代を経て、豊臣秀吉による天下統一後は宇喜多氏が美作を治めました。

1847年（弘化4年）には、小童谷村の日尾山が勝山藩直営の鉄山となり、廃山となるまで小童谷村の経済を支えました。明治維新の頃には、種村から桑瀬分、粟谷村から大杉分がそれぞれ一村を成していましたが、1872年（明治5年）に桑瀬分は種村へ、大杉分は粟谷村へそれぞれ統合されました。

葉煙草の産出が多かったため、1881年（明治14年）には民間経営による煙草製造会社が設立されましたが、専売法の施行により1898年（明治31年）に解散しました。

二川村以降

1889年（明治22年）に町村制が施行され、二川村が正式に発足しました。明治末期から大正時代にかけては、農業に加えて養蚕業と絹糸工業が盛んでした。二川村最初の株式会社も製糸工場であり、女子工員50名が勤務していました。1954年（昭和29年）には、ジャージー牛の種牛が30頭導入され、酪農が奨励されました。

1956年（昭和31年）9月30日、二川村は湯原町と合併しました。当初は湯原町、二川村、中和村の3ヶ村での合併が予定されていましたが、中和村が八束村との合併を希望したため、まずは湯原町と二川村の2地域で合併協議が進められました。その後、2005年（平成17年）3月には、久世町、勝山町、落合町、北房町、美甘村、湯原町、中和村、八束村、川上村の9つの町村が合併し、現在の真庭市が誕生しました。

湯原ダム計画

1954年（昭和29年）、湯原ダム建設に伴い、二川村の一部が水没しました。ダム建設の計画は、1919年（大正8年）に備作電気株式会社によって初めて提案されましたが、当時は電力需要が少なく、資金も多額になるため実現しませんでした。1951年（昭和26年）に湯原ダムの建設計画が本格的に動き始め、県営も検討されましたが資金的に難しく、民間の中国電力株式会社の事業となりました。その結果、二川村大字小童谷の田和、釜戸原、湯川、小童谷、日名田、神原、大字黒杭の内、土居分、黒杭の一部が水没し、維新小学校、二川巡査駐在所、二川郵便局、黒杭診療所、二川第一農業協同組合、小童谷公民館、田和うらじろ樫などの施設が水没しました。

教育

二川村における教育の歴史は古く、1875年（明治8年）には種村字立石に精錬小学校が開校しました。修業年限4年の小学校で、池田稲夫によって命名されました。1877年（明治10年）には、黒杭村土居分に維新小学校が開校しました。その後、両校は統合され、二川村の教育を支えてきましたが、2019年（平成31年）に湯原小学校との統合に伴い、真庭市立二川小学校は閉校しました。

観光・文化

二川地域には、熊野神社（粟谷）、芦雄神社（粟谷）、黒杭神社（黒杭）、田根神社（種）、建部神社（藤森）、大林寺（黒杭）、飯山城跡（黒杭）など、多くの名所・旧跡があります。また、建部神社秋の大祭、田根神社秋の大祭、熊野神社秋の大祭などの祭事が地域を盛り上げています。

特産品としては、ダム建設により水没した黒杭村の土居分で作られていた地小菜の一種である土居分小菜があります。その他、あきたこまち、ひめのもち等の稲作栽培をはじめ、牧草加工、ハウストマト栽培、リンゴ栽培、クリスマスローズ等の花栽培が盛んです。

江戸時代末期には、「墨つけ」と呼ばれる独特の風習があり、正月15日に女性が男性を追いかけ、墨をつけるという行事が行われていました。また、病気の治療は祈祷が主体であり、各村には法印さんと呼ばれる祈祷師がいました。小童谷村にあった日向鎮座の淡島様は、婦人病一切の守護神として広く信仰を集めていましたが、婦人科の出現や第二次世界大戦、ダム建設により下火になり、建部神社に合祀されました。

著名人

二川地域からは、狩野如石（画家）、本名清延（学者）、宍戸定十郎（教育者）、徳山仙太郎（教育者）など、多くの著名人が輩出されています。

現在の二川地区

現在の二川地区は、種自治区、粟谷自治区、藤森自治区、黒杭自治区に分かれており、それぞれが自治会活動を行っています。また、二川地区連合協議会や二川ふれあい地域づくり委員会などの団体が、地域の活性化に取り組んでいます。

二川地区は、その豊かな自然と歴史、文化を大切にしながら、未来に向けて新たな一歩を踏み出しています。

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