二日市保養所

二日市保養所の概要

二日市保養所（ふつかいちほようじょ）は、福岡県筑紫郡二日市町（現在の筑紫野市）に位置していた施設で、厚生省引揚援護庁が設置した医療機関です。この場所は、太平洋戦争が終結した後、満州や朝鮮などから帰国した日本人女性のための医療サービスを提供していました。具体的には、健康診断、堕胎手術、性病治療などが行われ、多くの女性がここで支援を受けました。

設立の背景

この保養所は、戦後すぐの1946年に開設され、その設立には複数の経緯があります。特に、戦後の混乱期には、多くの女性が性的暴力に遭い、それによる妊娠や病気の危険に直面していました。九州大学の医師たちは、これに対応するために外務省と連携し、在外同胞援護会の支援のもと、病院を設立することを提案しました。そうして開設されたのが二日市保養所でした。

施設の特性

二日市保養所は、元々愛国婦人会の保養所であったため、非常に落ち着いた環境に位置していました。温泉も湧き出るこの場所は、療養には最適とされ、医療施設の建物は木造の2階建てで、複数の小部屋に分かれていました。交通の便が良く、引揚港から比較的近いこともあり、利用者にとって通いやすい環境が整っていました。

スタッフと患者

保養所の運営には、医師2人、看護婦10人、事務職員3人、用務員4人が関わり、女性患者に対する広報活動にも配慮がなされました。特に、引揚船でビラを配布するなどして、利用者に情報が行き届くよう工夫されていました。実際、保養所には多くの女性が訪れ、彼女たちは不法妊娠や性病の治療を受けるためにここを利用しました。具体的には、不法妊娠や正常妊娠、性病の症例が多数報告されており、そこには様々な背景を持つ女性が含まれていました。

不法妊娠と治療の実態

1946年から1947年にかけて、ここでは約400件から500件の中絶手術が行われたと推測されています。この時期の女性は、戦争の影響で多くが精神的にも肉体的にも疲弊しており、麻酔薬が不足していることから、麻酔なしでの手術が行われることもありました。このため、死亡するケースも少なくありませんでした。医師たちは、国からの圧力の下で違法な中絶を行わざるを得ない状況にあり、そのことに対しての不本意さを訴える声も聞かれました。

閉鎖とその後

二日市保養所は、1947年に優生保護法が施行されたことに伴い閉鎖されました。この後の敷地には済生会二日市病院が建設され、現在はその病院が南に移転し、跡地には老人ホームも設けられています。残された記憶として、当時の悲しい歴史を思い起こさせる石碑が存在しています。

終わりに

二日市保養所は、戦後の混乱の中で特に弱い立場の女性たちを助けるために存在した重要な施設でした。その多くの女性たちの苦悩と希望が交錯する場所であったことを、今一度心に留めておく必要があります。

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