二木一一

二木一一：イオンの礎を築いた実業家

二木一一（ふたぎ かずいち、1909年9月20日 - 1980年8月20日）は、日本の昭和時代から活躍した実業家で、現在のイオン株式会社の礎を築いた人物の一人です。兵庫県姫路市出身の彼は、困難な時代を生き抜き、その経営手腕によって日本の小売業界に大きな足跡を残しました。

幼少期は貧困の中で育ちました。10歳の時に母親が家計を支えるため姫路市で働き始め、兄弟たちはそれぞれ丁稚奉公や工場勤務へと散らばりました。一一自身も13歳から夕刊配達や様々なアルバイトに励み、働くことの喜びを見出していきました。高等小学校卒業後には、大阪毎日新聞の販売店で働き、当時としては高収入を得るまでになりました。

昭和8年（1933年）、二木は後にフタギの副社長となる妻と結婚。昭和12年（1937年）、姫路市で「フタギ洋品店」を創業します。しかし、太平洋戦争の勃発により、昭和18年（1943年）には勤労動員、翌年には応召され、奉天へ配属されました。兵士として従軍する中で、部隊の欠員により二等兵の身でありながら小隊長に抜擢され、120名の部隊を率いることになります。終戦後、復員した二木は、姫路空襲で焼失していたフタギ洋品店の再建に奔走しました。

戦後の混乱期、物資不足の中で二木は法令遵守を徹底し、配給制下でも顧客の信頼を得ました。昭和24年（1949年）にはフタギ株式会社を設立。昭和25年（1950年）の配給制度終了時には、大規模店に次ぐ高い売上を達成しました。この経験から「商売繁盛の要素は正しさにある」との信念を確立しました。

その後、フタギはスーパーマーケットへと業態転換を図ります。「良品廉価」を掲げる「よしみ市」をオープン、生鮮食品なども扱うようになり、店舗規模を拡大していきました。アメリカ合衆国への視察では、広い駐車場を持つ店舗の盛況ぶりを見て、日本の小売業における駐車場の重要性を確信しました。

昭和40年代後半には、姫路市を拠点に西播磨地域、神戸市、阪神間へと事業を拡大しました。同業の岡田屋（現イオン）の岡田卓也氏との出会いが、二木の人生に大きな転換をもたらします。両社の経営統合に向けた協議が始まり、大阪府のシロを加えた3社による共同仕入会社（初代）ジャスコを設立。昭和45年（1970年）、フタギはジャスコ、岡田屋傘下のオカダヤチェーン、カワムラと合併し、現在のイオンにつながる（2代目）ジャスコが発足しました。二木は初代会長に就任し、その後相談役に退いた後、昭和55年（1980年）に71歳で亡くなりました。彼の後を継いだ次男の二木英徳は、ジャスコの第2代社長に就任しました。

二木一一は、困難な時代を生き抜き、誠実な経営と時代の変化を先取りする洞察力で、現在のイオングループの礎を築いた、日本の小売業界における重要な人物です。彼の経営哲学は、現代においても多くの企業に示唆を与え続けています。

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