フタギ

フタギ：イオンの源流、兵庫県姫路市から生まれたスーパーマーケット

1937年（昭和12年）、兵庫県姫路市で二木一一氏によって創業された「フタギヤ洋品店」は、現在のイオン株式会社の起源となる重要な企業の一つです。戦後の混乱期において、フタギは徹底した法令遵守をモットーに事業を展開しました。物資不足が深刻な中、闇市に商品を流す多くの小売業者とは一線を画し、配給切符による取引を徹底。その結果、1950年（昭和25年）の配給制度終了時には、店舗面積はわずか20㎡にもかかわらず、県下第4位、姫路市では第1位の切符取扱高を誇るまでに成長しました。

戦後復興期を経て、フタギは衣料品販売から生鮮食品へと事業を拡大し、本格的なスーパーマーケットへの転換を図ります。1953年（昭和28年）には「良品廉価」を謳う「よしみ市」をオープンさせ、多店舗展開戦略を着実に進めていきました。

1960年（昭和35年）、二木一一氏の次男である二木英徳氏がフタギに入社します。この頃、二木一一氏はアメリカ合衆国のスーパーマーケットを視察。そこで目にしたのは、店舗の前に広がる満車状態の駐車場でした。この光景に強い衝撃を受けた一一氏は、「日本でも、駐車場なしでは商売は成り立たなくなる」と確信を抱き、駐車場を備えた店舗づくりに力を入れるようになります。

1967年（昭和42年）には、姫路市を中心とした西播磨地域から神戸市、阪神間へと店舗網を拡大し、兵庫県下に22店舗を展開する有力なスーパーマーケットチェーンへと成長を遂げました。更なる事業拡大を目指し、1968年（昭和43年）には全店舗の総売場面積を2倍に拡大する計画を発表。この計画実現のため、積極的な経営戦略が展開されていきます。

大きな転機となったのは、1960年代後半の岡田屋（三重県）との出会いです。当時、年商100億円を超える岡田屋を経営していた岡田卓也氏と親交を深めた二木一一氏は、共同仕入れを行う合弁会社の設立を構想。この構想には、大阪府北摂地域を拠点とするシロ株式会社も加わり、1969年（昭和44年）2月、3社共同でジャスコ（初代）が設立されました。

そして、1970年（昭和45年）3月20日、フタギはジャスコ（初代）、岡田屋傘下のオカダヤチェーン、カワムラと対等合併。現在のイオン株式会社につながるジャスコ（2代目）が誕生しました。この合併において、岡田卓也氏はジャスコ（2代目）の初代社長に就任し、二木一一氏は会長に就任。二木一一氏は岡田卓也氏に息子の英徳氏のことを託し、1975年（昭和50年）8月20日、70歳でこの世を去りました。その後、二木英徳氏は1984年（昭和59年）にジャスコ（2代目）の2代目社長に就任しています。

合併時点では、フタギは兵庫県内に27店舗を展開していました。赤地に二重円で囲んだ木をデザインしたロゴマークは、当時の人々の記憶に強く残っていることでしょう。フタギは、その歴史と革新的な経営戦略によって、日本のスーパーマーケット業界に大きな足跡を残し、現在のイオンへと続く礎を築いたのです。

参考文献

* 『日本スーパーマーケット名鑑』1969年版（商業界）

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