二本立て興行

二本立て興行とは

二本立て興行とは、映画館で2本の映画を1本分の料金で上映する形式のことです。英語では「double feature」または「double bill」と呼ばれます。かつては長編映画1本に数本の短編映画を添えるのが一般的でしたが、二本立て興行の登場により、映画鑑賞のスタイルは大きく変化しました。

オペラにおける二本立て興行

映画だけでなく、オペラの世界でも二本立て興行は存在しました。1幕または2幕の短いオペラを単独で上演するのが難しかったため、2つの作品を組み合わせて上演していました。有名な例として、1893年にメトロポリタン歌劇場で上演されたマスカーニの『道化師』と『カヴァレリア・ルスティカーナ』があります。この2作品は「Cav and Pag」という通称で親しまれ、現在でも二本立てで上演されることが多いです。

映画二本立て興行の始まり

映画の二本立て興行は、1930年代にアメリカで始まりました。それまでは、長編映画にニュース[[映画]]や短編アニメ、実写喜劇などが添えられていました。しかし、1929年にトーキー映画が普及し、大恐慌の影響もあって、劇場経営者たちは新たな戦略を迫られました。そこで、2本の映画を1本分の料金で上映することで、観客を呼び戻し、コストを削減することを考えました。この戦略は成功し、二本立て興行は一般的な上映形式として定着しました。

二本立て興行の構成

1930年代の典型的な二本立て興行は、以下のような構成でした。

1. 予告編
2. ニュース[[映画]]
3. 短編アニメなど
4. 低予算の長編映画（B級[[映画]]）
5. 短い幕間
6. メインの長編映画（A級映画）

地方の映画館は二本立て興行によって集客力を高め、一本立て興行の大劇場に対抗しました。これに注目したメジャー映画会社は、余ったセットやスタッフを利用してB級[[映画]]を製作しました。また、リパブリック・ピクチャーズやモノグラム・ピクチャーズといったB級[[映画]]専門の会社も誕生しました。

二本立て興行の衰退

二本立て興行は、ブロック・ブッキングという配給システムを生み出しました。これは、メジャー映画会社がA級映画と一緒に指定するB級[[映画]]の上映を劇場に義務付けるもので、抱き合わせ販売のようなものでした。1948年、アメリカ合衆国最高裁判所はこれを独占禁止法に違反すると判断し（パラマウント裁判）、スタジオシステムは終焉を迎えました。

その後、メジャー映画会社からの要求はなくなったものの、地方の映画館、特にドライブインシアターでは集客のために二本立て興行を続けました。1940年代末には、アメリカの映画館のうち、二本立て興行を専門とするものが29％、専門ではないものの実施しているところが36％に達しました。パラマウント裁判以降、上映作品の選定には変化が見られ、以下のような作品が上映されました。

メジャースタジオの旧作リバイバル
メジャースタジオから権利を買い取った旧作のリバイバル
* 小規模スタジオが制作した低予算映画

1960年代になると、二本立て興行はドライブインシアターでの上映が中心となり、現代のような一本立て興行が主流となりました。

二本立て興行の復活

1990年代には、2本の映画をセットにしたVHSが「ダブル・フィーチャーズ」という名前で販売されました。2007年には、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが映画『グラインドハウス』で二本立て興行を再現しました。

日本の映画界でも、北村龍平監督と堤幸彦監督が観客投票で雌雄を決める「DUEL（Duel Project）」という新しい試みの二本立て興行を行いました。

2009年には『トイ・ストーリー3』の公開前に、『トイ・ストーリー』と『トイ・ストーリー2』が二本立てでリバイバル上映されました。また、2010年には『エクリプス/トワイライト・サーガ|エクリプス_トワイライト・サーガ』の公開前に、『トワイライト〜初恋〜』と『ニュームーン/トワイライト・サーガ|ニュームーン_トワイライト・サーガ』が上映されました。

2011年には、劇場版ポケットモンスターの14作目が2本同時に公開されました（『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ ビクティニと黒き英雄 ゼクロム・白き英雄 レシラム』）。


現在、二本立て興行はほとんど見られなくなりましたが、その歴史とスタイルは映画ファンに愛されています。オーストラリアのメルボルンには、1936年のオープン以来、二本立て興行を続けているアスター・シアターが現存しています。

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