二酸化炭素吸収源

二酸化炭素吸収源（にさんかたんそきゅうしゅうげん）

定義

二酸化炭素吸収源とは、地球温暖化の主な原因とされる二酸化炭素をはじめとする、気候システムに影響を及ぼす温室効果ガスなどを、大気中から除去する働きを持つシステムや場所を指します。これは「炭素吸収源」とも呼ばれます。より広義には、温室効果ガスやそれらを生成する物質を大気から取り除く過程やメカニズム全体を含む概念です。

これに対し、温室効果ガスなどを大気中に放出するものは「排出源」と呼ばれ、吸収源とは対極に位置します。また、二酸化炭素を一時的に蓄える場所は「炭素プール（貯蔵庫）」と呼ばれ、これは状況によって吸収源にも排出源にもなり得ます。

大気中の二酸化炭素濃度を低減させるため、吸収源の能力を高めたり、その規模を拡大したりする活動は、「吸収源活動」と呼ばれ、地球温暖化対策において非常に重要視されています。

主な吸収源の種類

海洋: 海洋は、大気中の二酸化炭素を海水に溶け込ませる物理的な働き（溶解ポンプ）や、海洋生物が二酸化炭素を取り込み、その死骸などが深海や海底に沈降・蓄積する生物的な働き（生物ポンプ）を通じて、炭素を吸収します。また、海洋微生物による炭素固定も含まれます。湖や河川も類似のメカニズムを持ちます。
森林: 森林は、植物が光合成の際に二酸化炭素を吸収し、自身の成長に利用することで吸収源となります。さらに、森林の存在は表層土壌の流出を防ぎ、土壌が持つ炭素吸収・貯蔵能力を維持・向上させるという副次的な効果も持ちます。
土壌: 植物の枯死体や動物の死骸などは分解時に二酸化炭素を放出する排出源となり得ますが、これらが土壌中に長期間埋没・固定されることで、土壌自体が吸収源として機能します。土壌中の微生物が行う炭素固定も重要な要素です。

吸収源活動

吸収源を増やす、またはその吸収能力を高める取り組みは、主に植林や植生の回復を中心に行われるため、「土地利用、土地利用変化及び林業（LULUCF）」分野の活動としても知られています。

自然の吸収源に対する活動: 人為的に管理可能な自然の吸収源の能力を強化するものです。具体的な手法には、新規の植林、既存森林の持続可能な管理、自然植生の保護、違法な伐採や乱獲の防止、土地の計画的な利用などが含まれます。
人工的な吸収源: 物理的、化学的、工学的な技術を用いて、二酸化炭素を大気から回収し、貯留するものです。「二酸化炭素貯留」または「二酸化炭素回収・貯蔵（CCS）」と呼ばれる技術がこれにあたります。

国際的な枠組みにおける吸収源活動

気候変動に関する国際連合枠組条約（UNFCCC）や京都議定書、およびその後の国際合意において、吸収源活動は地球温暖化対策の一部として位置づけられ、詳細な規定が定められています。

京都議定書の附属書I締約国（先進国など）が国内で行う吸収源活動は、各国政府や認定機関が科学的根拠に基づき吸収量を算定し、認証します。クリーン開発メカニズム（CDM）や共同実施（JI）のプロジェクトにおける吸収源活動も、それぞれの方法論に則って認証されます。認証された吸収量（Removal Unit, RMU）は、締約国の温室効果ガス排出枠から差し引かれ、削減量として計上されます。

京都議定書採択後の最初の締約国会議（COP1）で採択された文書では、吸収源活動として以下の7つの分野が特定されました。

新規植林: 過去50年間森林でなかった土地を人為的に森林に転換する活動。
再植林: 森林から非森林に転換された土地を人為的に森林に戻す活動。定義には時期による変遷があります。
森林減少: 森林を人為的に非森林に転換する活動（これは吸収源活動ではなく、排出活動として扱われることが多いが、LULUCFの一部として定義される）。
植生回復: 新規植林や再植林に該当しない土地で、人為的に炭素蓄積を増やす植生の構築活動。
森林管理: 持続可能な森林生態系、経済、社会機能を目指す管理・利用活動。
耕作地管理: 農地や休耕地における炭素蓄積に関わる管理システム。
放牧地管理: 家畜生産に利用される土地での、植物と家畜の管理システム。

関連事項

炭素固定: 大気中の二酸化炭素を有機物として固定するプロセス。
二酸化炭素除去: 大気中の二酸化炭素を様々な手段で取り除くこと。
* 海洋施肥: 海洋の一部に栄養塩を投入し、植物プランクトンの増殖を促すことで、二酸化炭素吸収と漁業資源増加を目指す試み。

これらの吸収源とその活動は、気候変動対策の重要な柱の一つとなっています。

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