二重星団

二重星団（Double Cluster）

二重星団は、夜空でひときわ目を引く天体の一つで、ペルセウス座に位置する二つの散開星団が非常に近接して見えることからこの名で呼ばれています。カシオペヤ座との境界にほど近く、天の川の中央を流れる光の帯の中に、肉眼でもかすかな光の集まりとして確認できます。その見事な姿は、多くの天体観測愛好家を魅了しています。

「h+χ」という別名とカタログ番号

二重星団を構成する西側の星団はh Persei、東側の星団はχ Perseiとして、1603年に天文学者ヨハン・バイエルによってバイエル符号が与えられました。このため、二重星団は「h+χ（エイチカイ）」という別名でも知られています。
さらに詳細なカタログ番号としては、西側の星団（h Persei）がNGC 869およびMel 13、東側の星団（χ Persei）がNGC 884およびMel 14として登録されています。
なお、ペルセウス座にはχ星（カイせい、7 Persei）という恒星が存在しますが、これは二重星団とは無関係の全く別の天体です。位置は二重星団に近いものの、距離ははるかに手前にあり、混同を避けるために7番星とも呼ばれます。

若い星々が集まる壮大な星団

二重星団は、ペルセウス座OBアソシエーションと呼ばれる巨大な星形成領域の中核をなしていると考えられています。誕生から約1400万年という比較的若い星団であり、数多くの明るい若い星々が集まっています。
特に質量が大きい恒星は急速に進化し、既に赤色超巨星の段階に達しているものも見られます。たとえば、ペルセウス座S星、T星、RS星、SU星、AD星といった半規則型変光星は、いずれも二重星団に属する赤色超巨星であることが分かっています。これらの星々は、星団の進化の速さを示唆しています。

古代からの観測と望遠鏡による認識

二重星団は、肉眼でも確認できる明るさを持つため、古代から人々に知られていました。紀元前にはすでに、ギリシャの天文学者ヒッパルコスがこれを「恒星ではない、かすかな光のかたまり」として星表に記録しています。
バイエルがhとχの符号を与えた経緯には、歴史的に若干の混乱がありました。ティコ・ブラーエは二つの星団を一つと見なしており、その星表を基にしたバイエルがh Perseiとしたのは別の星だったという説もあります。しかし、1840年代以降は現在のようにNGC 884がχ、NGC 869がhと見なされるのが一般的となりました。
この天体が二つの独立した星団の集まりであると明確に認識されるようになったのは、望遠鏡による観測が始まってからです。ガリレオ・ガリレイまたはウィリアム・ハーシェルが、それぞれ独立に望遠鏡で観測し、その正体を明らかにしたとされています。
なお、著名な天体であるにもかかわらず、シャルル・メシエが作成したメシエカタログには含まれていません。

二重星団は、天体望遠鏡を使えば、視野いっぱいに広がる無数の星々の集まりとして、非常に見事な姿を見せてくれます。双眼鏡でも個々の星が見え始め、その美しさを手軽に楽しむことができます。若い星団ならではの輝きと、二つの星団が織りなすコントラストは、観測者を飽きさせません。

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