二重葉脈

小説『二重葉脈』の概要

松本清張による長編推理小説『二重葉脈』は、1966年から1967年にかけて『読売新聞』に連載され、1967年11月に光文社から出版されました。本作は、経済犯罪と人間ドラマが交錯する緻密なストーリー展開を特徴としています。

あらすじ

物語は、家電メーカー・イコマ電器の倒産から始まります。この倒産の背後には、不正な粉飾決算が疑われており、警視庁は以前の社長である生駒伝治と経理部長の杉村治雄に焦点を当てて捜査を進めます。特に注意を引くのは、杉村が3月12日を最後に行方不明になっている点です。捜査二課の神野刑事は、秘書室長の柳田一郎と面会し、捜査を開始します。

神野は、生駒が会社の資産を横領した疑いがあり、さらに彼の行動が不審であることに気づきます。生駒は神田駿河台の「駿峡荘ホテル」に身をひそめていたが、彼の行動は隠密に変わっていきます。3月13日、彼が岡山県の湯原温泉に女性と宿泊していた情報が浮上し、同日夜には旭川ダムでの車の転落事故が発生。これらの事件が杉村の失踪に関連しているのか、神野にとっては大きな疑問となります。

さらに、前岡正造も神野の捜査対象に加わるが、4月16日には彼も行方不明となり、遺体が羽曳野市の前方後円墳で見つかります。前岡の死は、杉村の指名手配に繋がり、神野はさらなる謎に直面します。やがて、5月8日には第三の殺人事件が発生し、神野は事件の背後に共通の犯人が存在することを確信します。

主な登場人物

本作には多彩なキャラクターが登場し、物語に彩りを加えます。主な人物たちには、以下のようなキャラクターがいます。

• - 神野滋: 警視庁捜査一課の中年刑事で、物語の中心人物。
• - 塚田刑事: 神野の同僚で、若手の優秀な刑事。
• - 河合警部補: 神野たちの上司で、捜査を指導する。
• - 生駒伝治: イコマ電器の前社長。経済的な問題を引き起こした中心的人物。
• - 杉村治雄: 前経理部長で、物語の鍵を握る行方不明のキャラクター。
• - 前岡正造: 前専務として、イコマ電器の経営に深く関与していました。

評価と影響

この作品は、当時の経済情勢を背景にしたリアルな経済小説として評価されており、特に推理小説評論家の山前譲は、イコマ電器の経営破綻から真相を探る過程が緻密に描かれている点を称賛しています。作品は、社会問題を取り上げつつ、ミステリーとしての面白さを兼ね備えています。読者はサスペンス溢れる展開に引き込まれ、最後まで展開を楽しむことができます。

関連項目

本作の取り扱うテーマは、企業倒産やその影響を扱っているため、当時の社会状況との関連性が強いです。また、関連する法律や交通手段についても触れられています。さらに文学的な要素として、神野が紹介する句や、作中に登場する旅館の背景なども魅力の一部です。

松本清張の『二重葉脈』は、経済犯罪と殺人事件が絡み合う緊迫したサスペンスを描いた、必読の推理小説です。

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