二風谷ダム

二風谷ダムの概要

二風谷ダム（にぶたにダム）は、北海道平取町に位置し、沙流川の本流に建設された特定多目的ダムである。このダムは、国土交通省北海道開発局室蘭開発建設部によって管理されており、重力式コンクリートダムとしての高い機能を誇り、高さは32メートルに及ぶ。主な目的は、沙流川の洪水調節や日高地域への水供給であるが、建設時にはアイヌ民族との文化的な衝突が生じ、ダム建設の差し止めを求める訴訟にまで発展した。このダム湖は「二風谷湖」と呼ばれ、地域の重要な自然資源となっている。

沿革

沙流川は日高地域で重要な川であり、周辺は競走馬の生産地として知られてきた。しかし、この川はほとんど手付かずの原始河川で、急峻な地形により頻繁に洪水が発生する場所であった。特に戦後、競走馬の生産が活発化し、地域資源を守るための治水対策が必要とされた。また、農業用水の需要も増え、工業用水道の確保も求められるようになった。

北海道電力は1952年から日高地方の河川を使った大規模な水力発電計画を始めた。ダム建設のための総合開発事業において、北海道開発局は経済発展に伴う水資源の確保を重視し、二風谷ダムの建設計画を立案した。

アイヌ民族の闘い

二風谷地区はアイヌ民族にとって聖地であり、豊かな文化が受け継がれてきた。このため、ダム計画に対する反対運動が広がり、9年間にわたる補償交渉を経て1985年に合意に達した。しかし、アイヌ文化を重視する人々はダム建設に強く反対し、最終的に強制収用に抵抗した。1989年にはダム建設の差し止めを求める訴訟が起こされ、この過程でアイヌ民族を先住民族として認める重要な判決が下された。この裁判はアイヌ文化の保護を強調する上で、歴史的な意義を持つものであった。

ダムの目的

二風谷ダムは治水と利水を主な目的としており、洪水調節、不特定利水、灌漑、水道用水、工業用水供給、水力発電の各機能を備えている。特に治水に関しては、沙流川の計画高水流量の洪水を抑える設計がなされており、河川生態系に配慮した魚道も設置されている。

日高豪雨とダムの機能

2003年8月、台風10号が上陸し、沙流川流域で深刻な豪雨が発生した。この際、二風谷ダムは予想以上の流入量を記録したものの、事前に行われた流入量と放水量の調整により、大部分の洪水を阻止した。ただし、避難勧告が下される中での情報不足から、住民に混乱が生じ、賠償請求が発生する事態となった。

平取ダムとの関係

二風谷ダム上流には、平取ダムの建設が計画されている。平取ダムはより大規模なプロジェクトであるが、アイヌ民族の反対運動や公共事業見直しの影響で進捗が遅れている。地域住民の安全とアイヌ文化の保護が両立することが求められており、これからの対応が注目されている。

結論

二風谷ダムは、治水や利水だけでなく、アイヌ文化の保護と認識を新たにする役割も果たしている。これにより地域の住民とアイヌ民族との調和が求められる重要な課題となっている。

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