五個荘金堂町

五個荘金堂町：近江商人のルーツと伝統が息づく町

五個荘金堂町（ごかしょうこんどうちょう）は、滋賀県東近江市五個荘地区に位置する、歴史と文化が色濃く残る町です。古代の条里制の名残をとどめる田園風景の中に、江戸時代から昭和初期にかけて活躍した近江商人の屋敷が点在し、独特の景観を形成しています。この貴重な町並みは、重要伝統的建造物群保存地区として選定され、2015年には「琵琶湖とその水辺景観－祈りと暮らしの水遺産」の構成文化財として日本遺産にも認定されました。

地理

金堂町は五個荘地区のほぼ中央に位置し、条里制に基づいた正方形に近い町域を持っています。集落は町域の中部から南部に集中しており、昭和中期には東部と南西部に小規模な団地が開発されました。周辺の町としては、北に五個荘七里町、北東に宮荘町、南東に五個荘竜田町、南に五個荘石川町、南西に五個荘塚本町、北西に五個荘石馬寺町があります。

町内には、「一ノ坪」から「和井挾」まで、条里制に由来する75もの小字名が残されており、その歴史の深さを物語っています。

歴史

「金堂」という地名は、聖徳太子がこの地に金堂を建立したという伝承に由来します。現在の大城神社の北東には8世紀創建と推定される金堂廃寺跡があり、地区中心部には聖徳太子開基伝承を持つ浄栄寺があります。地名は「今堂」や「近藤」と表記されることもありました。

古代には神崎郡に属し、中世には山前南荘に属して六角氏の支配を受けました。観音寺城の戦いでは、金堂村を含む五個荘一帯が主戦場となりました。

江戸時代には幕府領、館林藩領を経て、郡山藩領となりました。1693年には郡山藩が金堂村に陣屋を設置し、地域の支配拠点としました。この陣屋を中心に、寺院を配置し、その周囲に民家を配するという集落構成が形成され、現在の金堂町の集落構成の基盤となっています。

金堂村は稲作中心の農村でしたが、江戸中期以降、副業として行商に出る商人が現れ、江戸後期には呉服や綿・絹製品を中心に、商圏を日本全国に拡大していきました。行商から豪商へと発展した人々は、京都・大坂・江戸へも出店し、成功後も本宅や郷里を大切にし、金堂の景観を豊かにしました。

近代化が進むにつれて、日本各地はもちろん、一部の商人は朝鮮半島や中国大陸へも進出するようになりました。戦後の圃場整備によって条里制の遺構を残す田地は姿を変えましたが、1980年代頃から景観保全への関心が高まり、五個荘町は商人屋敷などの保存・観光資源化に力を入れ、1998年に重要伝統的建造物群保存地区として選定されました。

寺社

金堂町には、歴史ある寺社が点在しています。

弘誓寺：那須与一の孫が開基したと伝わる真宗大谷派寺院。滋賀県下で2番目に大きい本堂は国の重要文化財です。
安福寺：浄土宗寺院。地獄絵を伝えます。寺の前の広場は、金堂町の行事やイベントの会場として利用されています。
浄栄寺：聖徳太子にまつわる寺伝が残る浄土宗寺院。
勝徳寺：大和郡山藩柳沢氏の供養堂。金堂陣屋の長屋門が移築保存されています。
大城神社：菅原道真を祀る郷社。観音寺城の鬼門にあたり、佐々木氏の守護神でもありました。

景観

金堂町は、近江八幡や日野と同様に近江商人の発祥の地として知られていますが、純農村から発展し、店はなく本宅だけが置かれたのが特徴です。商家であっても豪農風の屋敷が多く、茅葺農家も点在しています。鈴鹿山脈の伏流水を利用した水路が町内を流れ、鯉が泳ぐ風景は、訪れる人々を魅了します。

主な見どころ

近江商人屋敷：旧外村宇兵衛邸、旧外村繁邸、旧中江準五郎邸の3館が公開されています。
金堂まちなみ保存交流館：旧中江富十郎邸。金堂町の観光拠点として整備が進められています。
金堂馬場の五輪塔：正安2年の銘がある五輪塔です。

交通

鉄道の最寄り駅は近江鉄道本線五箇荘駅ですが、駅から少し離れています。コミュニティタクシーやレンタサイクルを利用すると便利です。

集落の北西を滋賀県道202号佐生五個荘線が通過しており、近江鉄道バスが運行しています。

五個荘金堂町は、近江商人の歴史と伝統、そして美しい景観が調和した、魅力あふれる町です。ぜひ一度、訪れてみてください。

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