柳沢氏

柳沢氏：甲斐武田家臣から伯爵家へ

概要

柳沢氏は、戦国時代から明治時代にかけて活躍した日本の氏族です。起源は甲斐源氏の一族である甲斐一条氏に遡り、甲斐国北西部に土着した武川衆の一員として、甲斐武田氏に仕えました。江戸時代には柳沢吉保が徳川綱吉に重用され、甲府藩15万石を領する大名となり、幕政を主導する存在となりました。明治維新後は華族に列し、伯爵家として、政治、実業界で活躍しました。

江戸時代以前

柳沢氏の祖先は、甲斐一条氏の後裔とされる甲斐青木氏の支流でした。戦国時代には武田氏の家臣として、甲斐国北西部で勢力を保ちました。天正8年（1580年）、柳沢信兼の軍令違反による切腹後、青木氏出身の横手信俊が家督を継ぎ、柳沢信俊と名乗るようになりました。武田氏滅亡後は、徳川家康に仕え、関東移封に伴い武蔵国鉢形に所領を得ました。

信俊の死後、嫡男の安吉が家督を継ぎ、旗本となりましたが、徳川忠長家臣を経て浪人となりました。その後、幕府に再出仕し、家老などの地位に就きました。安吉の次男吉次は徳川家綱付きの小十人となり、その子（養子）の信尹の代には800石取りの旗本となりました。

一方、信俊の四男安忠は、兄・安吉と同様に徳川忠長家臣を経て浪人となりましたが、徳川綱吉に仕え、その子・吉保は綱吉に重用され、小納戸から側用人、老中格、大老格へと昇りつめ、幕政を主導しました。元禄7年（1694年）、川越藩7万石の藩主に任じられ大名となり、さらに宝永元年（1704年）には甲府藩15万石の藩主となりました。宝永6年（1709年）、綱吉の死後、吉保は隠居し、嫡男の吉里に家督を譲りました。吉保の四男・経隆と五男・時睦にはそれぞれ1万石の所領が与えられ、甲府新田藩が成立しました。

柳沢家と武田氏宗家の高家武田家とは密接な関係にあり、吉保は武田信玄の次男の子孫を高家として復活させるなど、武田家との繋がりを重視していました。享保9年（1724年）、甲斐国が幕府直轄領となったため、吉里は郡山藩15万石に転封となりました。

明治以降

明治維新後、最後の郡山藩主松平保申（柳沢保申）は、松平姓を廃棄し柳沢姓に戻して新政府に恭順しました。版籍奉還後、郡山藩知事に任じられ、華族に列しました。華族令の制定により、宗家の保申は伯爵、黒川藩の光邦と三日市藩の徳忠は子爵となりました。

柳沢伯爵家は、統計学を専攻した柳沢保恵伯爵や、実業家として活躍した柳沢保承伯爵などを輩出しました。黒川柳沢子爵家も貴族院議員を輩出するなど、華族として活躍を続けました。

系図

柳沢氏の系図は、『寛永諸家系図伝』『寛政重修諸家譜』などに記載されています。これらの系図では、柳沢氏の祖先を青木氏に求め、武田氏の庶流である甲斐一条氏にまで遡っています。柳沢文庫には、郡山藩主時代に伝来した家系図も残されています。

まとめ

柳沢氏は、甲斐武田氏から徳川幕府、そして明治の華族へと、時代と共に変遷を遂げた名家です。その歴史は、武士の忠義、政治的策略、そして近代日本の発展に貢献した一族の物語として、今なお注目に値します。

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