五十万トン戦艦

五十万トン戦艦について

五十万トン戦艦（ごじゅうまんトンせんかん）は、明治時代末期に大日本帝国海軍の金田秀太郎中佐によって提案された超巨大戦艦の構想として知られています。この戦艦の通称は「金田中佐の50万トン戦艦」とも呼ばれ、想定される建造計画は多くの論議や興味を集めていきました。

背景と発想

金田中佐がこの構想を考案したとされるのは1912年頃のことです。彼は造船技師ではなく、用兵の専門家として海軍大学校の教官や呉海軍工廠の長を務めていました。資源が乏しい日本において、一度に多くの軍艦を建造することは大きな経済的負担となるため、海軍の中で「多数の軍艦を作るのではなく、巨大一艦を保有すれば良い」という考え方が広まりました。この発想は、1隻の艦船が国全体の海軍力に匹敵するという「移動要塞」としての役割を持つものでした。

金田中佐の提案した五十万トン戦艦は、計算を重ねた結果、波の影響を受けずに水平を保つために必要な幅を91メートル以上と見積もり、全長は609メートル以上、さらには50万トンという排水量が導き出されました。しかし当時、世界の造船技術はまだそのような巨大な艦艇の建造に対応しておらず、特に超弩級戦艦が台頭する時期であったため、実現は困難でした。

技術的限界と他国の影響

1913年に就役した日本の超弩級巡洋戦艦である金剛型は、イギリスで建造され、日本の国産艦としては超弩級戦艦の建造が始まった時期でした。それでも、当時の超弩級戦艦の排水量は22,200トンであり、また著名な客船タイタニックでも全長269.1メートルと、金田の構想には到底及びませんでした。結局、五十万トン戦艦の計画は、技術的な裏付けが不足していたため、草案の段階で終わることとなりました。

金田中佐の言葉と戦艦大和

後に戦艦大和を設計した平賀譲中将は、金田中佐について「突飛な発想をする人だが、時には参考になる意見もある」と語っています。実際、一隻の艦船を巨大化することで戦闘力を高め、費用を抑えることは理にかなっています。戦艦大和（68,000トン）の建造コストは高額でしたが、その背後には金田の考えがあったのかもしれません。

現代における最大規模の艦船

五十万トンを超える艦船が実際に建造されたのは1976年のバティラスが初めてです。21世紀初頭においても最大の艦艇はニミッツ級原子力空母であり、金田の構想を実現するような艦船は未だに存在しません。現存する最大のタンカーは排水量では50万トンを超えていますが、全長や幅で見れば五十万トン戦艦の計画を下回ります。

まとめ

五十万トン戦艦は、ただの夢物語ではなく、当時の海軍の発想や技術の限界、さらには未来への期待が詰まった構想でありました。金田秀太郎中佐の提唱したこの戦艦の計画は、特に海軍の戦略思想や造船技術の進歩の歴史に一筋の光を投げかけています。

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