五十円紙幣

五十円紙幣について

五十円紙幣は、日本銀行が発行していた紙幣の一つで、「五十円券」や「五十円札」とも呼ばれます。紙幣には「五拾円」と表記されています。過去には、高橋是清の肖像が描かれたB号券のみが発行され、現在では発行されていませんが、法律上は有効な紙幣として扱われます。

五十円紙幣の歴史

額面50円の兌換券は、1884年に制定された「兌換銀行券条例」で規定されました。翌年から日本銀行兌換券が発行されましたが、五十円券の発行は見送られました。

1927年の昭和金融恐慌時には、現金不足を補うため、甲五拾圓券（甲号券）が急遽製造されました。しかし、金融混乱が収束したため、実際には発行されませんでした。その後、50円の券種は長く発行されませんでしたが、朝鮮戦争時のインフレで十円紙幣の需要が増加したことから、1951年に百円紙幣と十円紙幣の中間券種としてB五十円券（B号券）が発行されました。

1955年からは50円ニッケル貨が発行され、B五十円券は1958年に発行を終了しました。以降、額面50円の貨幣としては50円硬貨が発行されています。

B号券について

1951年11月24日に大蔵省告示で様式が定められたB号券は、以下の特徴があります。

額面: 五拾円（50円）
表面: 高橋是清の肖像、月桂樹
裏面: 日本銀行本店本館
印章: 表面：総裁之印、裏面：発券局長
銘板: 日本政府印刷庁製造
記番号: 黒色、英字1文字＋数字6桁＋英字1文字
寸法: 縦68mm、横144mm
製造期間: 1951年10月5日 - 1955年3月30日
製造枚数: 360,600,000枚
発行開始: 1951年12月1日
支払停止: 1958年10月1日

B号券は、日本銀行券として最初に発行された五十円紙幣であり、政府紙幣を含めても明治通宝五十円券以来です。朝鮮戦争による物価高騰で十円紙幣の需要が増加し、百円紙幣と十円紙幣の中間として発行されました。

紙幣の表面には高橋是清の肖像、月桂樹、マイクロ文字の「五拾」、割模様の「50」がデザインされています。裏面には日本銀行本店本館の建物が描かれています。記番号はアルファベット＋数字6桁＋アルファベット1桁の形式で、発行枚数が少ないため頭のアルファベットは1桁のものしか存在しません。透かしは「50」の数字と日本銀行行章の不定位置の「ちらし透かし」ですが、印刷と重なり確認しにくい場合があります。用紙は木材パルプに三椏とマニラ麻を混合したものが使用されています。

B号券は表面のみが凹版印刷で、裏面は凸版印刷です。発行開始からわずか4年で製造が終了し、1958年に支払いが停止されました。そのため、流通枚数が少なく、現在では古銭としての価値が高くなっています。

日銀の勘定店では、B百円券を除く額面価格100円以下の銀行券として、無条件で引換依頼の対象とされていますが、自動販売機やATMでは利用できません。また、対面取引では受け取りを拒否されることがあります。銀行窓口では口座への預け入れや現行硬貨への交換ができますが、鑑定に時間がかかる場合や手数料が発生する場合があります。

未発行紙幣：甲号券について

1927年4月24日に様式が定められた甲五拾圓券（甲号券）は、実際には発行されませんでした。その主な仕様は以下の通りです。

額面: 五拾圓（50円）
表面: 彩紋、兌換文言
裏面: 印刷なし
印章: 表面：総裁之印
銘板: 大日本帝國政府内閣印刷局製造
記番号: 赤色、組番号のみ（通し番号なし）
寸法: 縦63mm、横113mm
製造期間: 1927年4月25日
製造枚数: 48,000枚
発行予定日: 1927年4月26日（未発行）

昭和金融恐慌による取り付け騒ぎの沈静化のため、裏面の印刷を省略した甲五拾圓券が製造されましたが、騒ぎが収まったため発行には至りませんでした。裏面が白紙である点や、額面金額の表記がない点などが特徴です。用紙は通常の紙幣用紙ではなく、遠隔地払戻用紙を転用したものでした。透かしは日本銀行行章と「銀」の文字のちらし透かしです。使用色数は表面2色のみです。

現在では見本券のみが現存しており、記番号の場所に「記號」と印刷されたものや、記号が入ったものが存在します。「開運!なんでも鑑定団スペシャル」では、1000万円の鑑定額がつけられたこともあります。

五十円紙幣の変遷

1884年: 兌換銀行券条例で額面50円の兌換券が規定されるが、発行は見送り。
1927年: 昭和金融恐慌で甲五拾圓券が製造されるが、発行されず。
1951年: B五十円券が発行開始。
* 1958年: B五十円券の支払停止。

実質的な使用期間は1951年末から1958年までの約7年間でした。後継は1955年発行の五十円硬貨です。

まとめ

五十円紙幣は、その短い発行期間と特徴的なデザインから、歴史的価値のある紙幣として知られています。特に未発行に終わった甲号券は、その希少性から非常に高い価値を持つとされています。現在ではほとんど流通していませんが、銀行窓口で交換は可能です。これらの情報を参考に、五十円紙幣に対する理解を深めていただければ幸いです。

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