五十嵐八五郎

五十嵐八五郎：埼玉梨の祖、その生涯と功績

五十嵐八五郎（1854年 - 1927年）は、埼玉県における梨栽培の先駆者であり、「埼玉梨の祖」としてその名を知られています。彼の功績は、単に梨の栽培技術を広めただけでなく、地域経済の発展にも大きく貢献しました。

生涯

五十嵐八五郎は、安政元年に武蔵国埼玉郡台村（現在の埼玉県久喜市菖蒲町台）に生まれました。一説には、同郡三箇村（現：久喜市菖蒲町三箇）で生まれたとも伝えられています。明治初期、彼は群馬県で梨栽培に興味を持ち、その技術を習得するために尽力しました。群馬県と千葉県でそれぞれ1年間、さらに埼玉県幡羅郡三ヶ尻村で8年間、合計10年間の実地研修を積みました。

1876年、五十嵐八五郎は大里郡武川村（現在の深谷市）で梨栽培に専念し、技術を向上させました。彼の栽培した梨は市場で高い評価を受け、大きな収益をもたらしました。しかし、彼はその利益を独占することなく、1881年には南埼玉郡の台村、三箇村、栢間村、江面村など、各地の村々を巡り、「長十郎」や「真鍮」といった品種の栽培を普及させました。彼は梨栽培の有利性と技術を広く伝え、地域の農業振興に貢献しました。

1910年の関東大水害は、五十嵐八五郎の功績を改めて認識させる出来事となりました。米や麦、野菜などの作物が甚大な被害を受ける中、梨はほとんど被害を受けなかったのです。当時、梨は高価で取引され、換金作物として地域に急速に普及していきました。五十嵐八五郎の普及活動が実を結び、梨栽培が地域経済を支える重要な産業へと発展したのです。

1927年、五十嵐八五郎は生涯を閉じましたが、彼の功績は後世に語り継がれ、「埼玉梨の元祖」として人々に記憶されています。

記念碑

五十嵐八五郎の功績を称え、彼を記念する石碑が建立されています。

しょうぶの梨100年記念園: 1994年に菖蒲町（現：久喜市）によって整備された公園で、五十嵐八五郎の功績を偲ぶことができます。
ナシの記念碑: 1922年に明倫館（旧江面村に所在した私立中学）の第3代館長、宮内純によって記された石碑です。幾度かの移設を経て、現在は「しみん農園久喜」の園内に設置されています。

年譜

1854年：武蔵国埼玉郡台村（または三箇村）に生まれる。
1871年：群馬県勢多郡大島村で梨栽培を知る。
1876年：埼玉県大里郡武川村で梨栽培に専念し、収益を得る。
1881年：埼玉県南埼玉郡の北部に梨栽培を広める。
1922年：宮内純により石碑が記される。
1927年：死去。

参考資料

菖蒲町の歴史と文化財
久喜市史
白岡町史
蓮田市史

五十嵐八五郎の生涯は、埼玉県の梨栽培の歴史そのものです。彼のパイオニア精神と地域への貢献は、現代においても語り継がれるべき遺産と言えるでしょう。

埼玉ゆかりの偉人データベース - 埼玉県ホームページ

もう一度検索