五十猛神

五十猛神（イタケルノミコト/イソタケルノミコト）とは

五十猛神は、日本神話に登場する神で、スサノオの子とされています。妹神には、オオヤツヒメとツマツヒメがいます。また、イザナギとイザナミの子である大屋毘古神と同一視されることもありますが、別の神であるという説もあります。

神名の読み方

五十猛神の読み方は、「イタケル」と「イソタケル」の二通りがあり、神社によって異なります。紀伊国の一宮である伊太祁曽神社では、「イソタケル」は誤りで「イタケル」が正しいとしています。一方、五十猛神の上陸伝承がある石見国五十猛村（現在の島根県大田市五十猛町）が、726年に「磯竹」と改称されたことから、奈良時代以降は「イソタケル」が主流であったと考えられています。また、射楯神（いたてのかみ）とも呼ばれることがあります。

神格

五十猛神は、林業の神として信仰されています。『日本書紀』や『先代旧事本紀』には、五十猛神が多くの樹木の種を持って天降り、それを日本各地に植えて青山を形成したという記述があります。紀伊国は古くから林業が盛んな地域であり、その地の信仰を集めていたと考えられます。また、土の船を作って海を渡ったという伝承から、造船、航海安全、大漁の神としても信仰され、商売繁盛、開運招福、悪疫退散、厄除けなどの神徳があるとされています。

『先代旧事本紀』には、「亦云 大屋彦神」とあり、『古事記』に登場する大穴牟遅神（オオナムジ、後の大国主）が逃げ込んだ木国の大屋毘古神と同一神とされることもあります。

子孫

五十猛神の子孫とされる氏族の一つに辛嶋氏があります。辛嶋氏は、豊国の氏族で、当初は香春岳山麓に住み、その後、大貞薦神社で神官または巫女を務めていたとされています。大神比義命とともに宇佐神宮の前身となる社を建立したと伝えられています。

文献における記述

五十猛神は、『日本書紀』と『先代旧事本紀』に登場します。『古事記』には直接登場しませんが、大屋毘古神と同一視されることがあります。

日本書紀

『日本書紀』には、スサノオがヤマタノオロチを退治した後の記述として、五十猛神が登場します。スサノオが新羅に天降った際、五十猛神も同行しました。しかし、スサノオがその地を嫌い、埴土で船を作って出雲に渡ったとされています。五十猛神は天降る際に多くの樹木の種を持っていましたが、新羅には植えずに日本に持ち帰り、九州から大八洲国に植えたとされています。

また、スサノオが自身の体毛から杉、檜、槇、楠などの樹木を作り出し、それらを妹神とともに日本各地に植えたという記述もあります。これらの記述から、五十猛神が林業の神として信仰されるようになったと考えられます。

先代旧事本紀

『先代旧事本紀』にも、スサノオとともに新羅に天降った後、出雲に渡ったという記述があります。また、五十猛神が多くの樹木の種を持ち帰り、日本各地に植えたとされています。同書では、五十猛神は別名を大屋彦神ともいい、大屋姫神、抓津姫神とともに紀伊国に祀られていると記されています。

関連事項

日本の神の一覧
伊太祁󠄀曽神社
五十猛駅
磯竹島（五十猛島）
度津神社
杉山神社
* 證誠神社

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