五島盛道

五島盛道：福江藩を揺るがした七代藩主の光と影

五島盛道（ごとう もりみち）は、宝永8年（1711年）に肥前国福江藩の第7代藩主として生まれました。五島家27代当主として、藩政を担うことになります。

藩主就任と財政改革の試み

享保13年（1728年）、父である盛佳の隠居に伴い家督を継ぎました。当時の福江藩は深刻な財政難に苦しんでおり、盛道は財政再建を最重要課題として藩政改革に着手します。しかし、領民の生活困窮は深刻で、延享4年（1747年）には参勤交代の資金調達にすら苦労するほどでした。

宝暦2年（1752年）、盛道は遂に家臣の知行削減という上知策を断行し、幕府からの借入金にも頼らざるを得ない状況に追い込まれます。しかし、その借金返済のため、領民から「高役銀」という名目で税を強制的に徴収したため、領民の生活はさらに困窮し、子供を質に出すという悲惨な状況にまで陥りました。

悪名高き「三年奉公制」

宝暦11年（1761年）、盛道は藩政史上最悪とも言われる悪法「三年奉公制」を開始します。これは、領民の娘（長女を除く）が16歳になると、福江の武家へ3年間無給で奉公に出すという制度で、事実上の人身売買、あるいは奴隷制度と酷似していました。奉公後、里に帰り結婚しても、離婚すれば再度奉公に出されるという過酷なものでした。米5石または銀300匁を藩に納めれば免除されましたが、それはごく一部の裕福な領民に限られました。この制度は「人付け改め」と共に幕末まで続き、藩も奨励したとされています。

失墜した信用と藩政の混迷

一連の悪政により、盛道は商人からの信用を失い、藩政は商人の援助なしには立ち行かなくなります。次第に商人が藩政に介入するようになり、また、倹約を主とした緊縮財政政策も失敗に終わりました。

明和6年（1769年）12月20日、盛道は次男の盛運に家督を譲り隠居。安永9年（1780年）4月20日に70歳で生涯を閉じました。

系譜

父：五島盛佳
母：林氏（側室）
正室：達子（井上正敦の養女、井上正矩の娘）
側室：峯女（中村氏）、品（八尾氏）、里也女
* 子女：五島盛義（長男）、五島盛運（次男）、五島道高（三男）、五島盛恭（四男）、伊東長詮正室、松平康道正室、松平康知正室、石川総武継室

五島盛道は、藩財政の立て直しを図ったものの、結果的に領民を苦しめ、藩の信用を失墜させるという負の遺産を残しました。その治世は、藩政のあり方、為政者の責任について、現代にも教訓を与えてくれます。

もう一度検索