五式十五糎高射砲

五式十五糎高射砲の概要

五式十五糎高射砲（ごしきじゅうごせんちこうしゃほう）は、太平洋戦争中に日本の陸軍によって使用された高射砲である。この砲は、特にアメリカのB-29爆撃機に対抗するために設計されたものであり、ドイツのテレフンケン社製のウルツブルグ・レーダーと連携して、高高度からの空襲に対応する能力を持っていた。

開発の背景

この高射砲の開発は、三式12cm高射砲とB-29の日本上空侵入が大きな要因となっている。当初、日本陸軍はB-29爆撃機に対して三式12cm高射砲で十分に対抗できると考えていたが、B-29が高度10,000〜15,000メートルで攻撃してくると、効果的な対処が困難であることが判明した。これを受けて、より高い有効射高を持つ新型高射砲の開発が急務となった。

1944年4月1日、陸軍技術研究所の黒川恒太郎大佐は、口径15cmで有効射高16,000メートルを実現する新たな高射砲の設計を完了した。大阪陸軍造兵廠と日本製鋼所でそれぞれ1門ずつ完成され、実弾射撃試験に合格した後に、東京都杉並区の久我山高射砲陣地に配備された。

仕様と性能

この高射砲は、実際の口径が149.1mmであるにもかかわらず、『15糎』と表記されている。砲弾の長さは約180センチメートルに達し、最大2000発の弾薬を装填可能であった。その威力は、高度20,000メートルで炸裂した場合、約200メートル四方の範囲にいる敵機を撃墜することができた。

実戦配備の詳細

久我山高射砲陣地では、日本無線株式会社の高橋倫三中隊長が指揮所を運営し、地下での指揮により、ウルツブルク・レーダーから伝送される敵機の情報をもとに射撃を行った。風向きや風速のデータを取り入れ、最適なタイミングで発射される仕組みで、砲火からウルツブルク・レーダーを保護するため、高さ5メートルの土塁が設けられた。

1945年8月1日、久我山高射砲はB-29の編隊に向けて発砲し、1発で2機を撃墜したとされる戦果が報告された。この試みはアメリカ軍を驚かせ、久我山周辺は飛行禁止区域となった。しかしこの戦果にはアメリカ軍の記録が存在せず、実際に2機を撃墜できた確証は乏しい。

戦後の状況

戦後には、久我山高射砲の1門がアメリカ軍によって接収されたが、伝えられるところによれば、輸送中に嵐に遭遇し海に流失したという話もある。残りの1門は解体され、スクラップにされた。高射砲としての存在は戦後の平和において消滅したが、その技術の歴史は今も語られている。

要目

• - 砲身重量: 9.2トン
• - 砲身長: 9メートル (60.35口径)
• - 射界: 高低0～+85度、周囲360度
• - 最大射程: 26,000メートル
• - 最大射高: 19,000メートル
• - 発射速度: 約六秒/発

このように、五式十五糎高射砲は、当時の技術と戦術の集大成ともいえる存在であり、激動の時代において重要な役割を果たした高射砲であったと言える。

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