五月女豊

五月女 豊

1949年4月13日、栃木県に生まれた五月女 豊（さおとめ ゆたか）氏は、日本の元プロ野球選手として、投手として長年にわたりマウンドに立ちました。

野球キャリアは地元の鹿沼農商高校（現在の鹿沼商工高校と鹿沼南高校に分かれている）から始まります。高校時代、五月女氏はエースとしてチームを牽引し、1967年の夏の甲子園大会に出場を果たしました。しかし、この大会では惜しくも1回戦で村上真二投手を擁する今治南高校に敗れ、甲子園の舞台を去ることになります。当時のチームメイトには、後にプロ入りを果たした捕手の中新井明氏がいました。

高校卒業後、五月女氏は社会人野球の名門、日本石油に入社します。ここでは三浦健二氏や奥江英幸氏といった主力投手の陰に隠れる存在でしたが、潜在能力は高く評価されていました。転機が訪れたのは1972年の日本産業対抗野球大会（サンベツ）です。この大会で五月女氏は圧巻の投球を披露します。特に2回戦の日本生命戦では、相手打線を完璧に抑え込み、無安打無得点試合（ノーヒットノーラン）を達成するという快挙を成し遂げました。さらに準決勝では、延長14回を投げ抜き、大昭和製紙を相手に完封勝利を飾る力投を見せます。勢いに乗ったチームは決勝でも鐘淵化学を下し、念願の初優勝を飾りました。五月女氏はその功績が認められ、大会の最高殊勲選手に選出され、一躍アマチュア球界で脚光を浴びる存在となりました。この時のチームには、後のプロ野球選手である秋元国武氏や町田公雄氏も所属していました。

社会人での目覚ましい活躍を受け、五月女氏は1973年のプロ野球ドラフト会議で、阪神タイガースから1位指名を受け、プロの世界へと足を踏み入れます。阪神では背番号「21」を背負い、プロキャリアをスタートさせました。プロ初登板および初先発登板は1973年4月22日、阪神甲子園球場での対広島東洋カープ戦でしたが、3回を投げ2失点で敗戦投手となりました。プロ入り初勝利、初先発勝利は翌1974年8月8日、静岡県営草薙球場で行われた対大洋ホエールズ戦で記録しています。

1975年のシーズンオフ、五月女氏は片岡新之介氏との交換トレードによって、太平洋クラブライオンズへと移籍しました。太平洋では背番号が「14」に変更となります。ライオンズがクラウンライターライオンズ（1977年）、さらに西武ライオンズ（1979年）と球団名が変わる中でもチームに在籍し続けました。この太平洋時代の1977年9月8日、県営宮城球場での対ロッテオリオンズ戦で、プロキャリアにおいてただ一度となる完投での勝利を飾っています。また、同年9月30日にはプロ初セーブも記録しました。1980年には、イースタン・リーグにおいて最優秀防御率のタイトルを獲得するなど、二軍では支配的な投球を見せました。

1982年、五月女氏は横浜大洋ホエールズへと移籍します。ここでの背番号は「37」となりました。大洋では主にリリーフ投手として登板機会を重ね、移籍初年度には58試合に登板し、6勝を挙げる活躍を見せました。マウンドでは、シュート、シンカー、カーブといった多彩な変化球を巧みに操り、打者を打ち取る投球スタイルを持ち味としました。

1984年にユニフォームを脱ぎ、現役生活に終止符を打ちました。プロ野球引退後は、実業家として新たな道を歩んでいます。現在は保険代理店「ユタカインシュアランス」を経営し、ビジネスの世界で活躍されています。また、野球との関わりも続いており、2001年からはプロ野球マスターズリーグの東京ドリームスに参加するなど、引退後も野球を楽しんでいます。

記録としては、以下の通りです。

• - 初登板・初先発登板：1973年4月22日、対広島東洋カープ2回戦（阪神甲子園球場）
• - 初勝利・初先発勝利：1974年8月8日、対大洋ホエールズ16回戦（静岡県営草薙球場）
• - 初完投勝利：1977年9月8日、対ロッテオリオンズ後期12回戦（県営宮城球場）
• - 初セーブ：1977年9月30日、対阪急ブレーブス後期13回戦

プロ生活で袖を通した背番号は、阪神時代が「21」、太平洋/クラウン/西武時代が「14」、横浜大洋時代が「37」でした。

多彩な変化球を武器に、社会人野球での栄光からプロ入り、そして複数球団を渡り歩きリリーフとしても活躍した五月女豊氏は、その野球人生を通じて確かな足跡を残しました。

※所属球団名は、太平洋クラブライオンズが1977年にクラウンライターライオンズへ、1979年に西武ライオンズへ球団名を変更しています。
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（文字数調整のため一部表現を調整しました。）

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