五條代官所

五條代官所：幕末の動乱と明治維新の足跡

大和国宇智郡五條村（現在の奈良県五條市）に存在した五條代官所は、江戸幕府の行政機関として重要な役割を担っていました。しかし、その歴史は幕末の動乱、天誅組の変によって大きく彩られることとなります。

建立と天誅組の変

寛政7年（1795年）、五條代官所は五條村に設置されました。代官所は地域の行政を担い、幕府の政策を執行する拠点として機能していました。しかし、文久3年（1863年）、天誅組の乱が起こると、その標的となり襲撃を受けました。この事件で、代官の鈴木源内氏ら多くの職員が命を落とし、建物は焼失するという、大きな被害を受けました。この襲撃は、幕末期の激動を象徴する出来事の一つとして記憶されています。

再建と明治維新

天誅組の変の後、元治元年（1864年）10月、代官所は現在の五條市新町に移転、再建されました。新たな建物は、地域の行政の中枢として機能を継続しました。明治維新後には、明治3年（1870年）2月、この再建された代官所を拠点に五條県が設置され、旧代官所管轄地や旧旗本領を管轄する、重要な役割を担うことになります。これは、五條代官所が明治維新においても重要な役割を果たしたことを示しています。

現状と史跡

現在の五條市には、旧代官所跡地が2ヶ所存在します。一つ目は、当初の代官所が置かれていた五條市本町一丁目です。2021年まで五條市役所が置かれていたこの地には、天誅組の変で襲撃を受けた代官所跡を示す石碑が建立されています。もう一つの跡地は、再建された代官所があった五條市新町三丁目です。ここは現在、奈良地方裁判所五條支部の敷地の一部となっています。

再建された代官所の建物は、五條県庁、警察大屯所を経て、1877年からは五條区裁判所として利用されてきました。裁判所の改築を機に、五條市はかつての代官所の長屋門と広場を譲り受け、整備しました。長屋門は五條市立民俗資料館として、広場は史跡公園として活用されています。民俗資料館には、天誅組の変に関する資料などが展示され、来訪者は当時の歴史に触れることができます。史跡公園には「明治維新発祥の地」を示す石碑のほか、国鉄8620形蒸気機関車78675号機（愛称「金剛・ハロー号」）も保存されており、歴史と産業遺産を同時に体感できる場所となっています。長屋門は老朽化により一時閉館していましたが、天誅組の変140周年の節目に当たる2003年に再整備され、再び一般公開されるようになりました。

まとめ

五條代官所は、単なる行政機関としての役割にとどまらず、幕末の激動期を生き抜き、明治維新へと繋がる歴史的舞台となりました。その跡地は、現在も史跡公園や資料館、裁判所として活用され、歴史を後世に伝える重要な場所となっています。五條市を訪れた際には、ぜひその歴史に触れてみてください。

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