天誅組の変

天誅組の変について

天誅組の変（てんちゅうぐみのへん）は、1863年（文久3年）8月17日に発生した幕末の尊皇攘夷派による武力蜂起の事件です。この事件では、公卿中山忠光が主導し、吉村虎太郎をはじめとする土佐脱藩浪士たちが大和国において決起しましたが、最終的には幕府軍との衝突により壊滅的な結果に終わりました。この事件は、大和義挙（やまとぎきょ）や大和の乱（やまとのらん）とも称され、幕末の動乱における重要な出来事として位置づけられています。

背景と経緯

文久2年の12月、孝明天皇が攘夷の勅書を将軍徳川家茂に授けると、幕府は尊攘派の圧力に屈する形で来年5月をもって攘夷を決行すると約束しました。この約束に対し長州藩は激しい攘夷運動を展開し、アメリカ船を砲撃する「下関戦争」が勃発しました。これらの活動に触発された尊攘派は大和国での武力行動へと向かう計画を練り始めました。

事件の根底には、幕府に対する不満があり、尊攘派は朝廷自らが軍を率いて攘夷を実行することを求めていました。このような状況下、天皇の神武天皇陵参拝を口実にして、攘夷の成功を祈願し、軍を挙げる計画が進められました。吉村虎太郎らは、尊攘派の一員として中心的な役割を果たすこととなります。

天誅組の決起

1863年8月、吉村虎太郎と忠光は、大和国で決起する準備を進めました。8月14日には、忠光が方広寺から決起を促す回状を発し、出陣の意向を朝廷に伝えました。その後、忠光率いる40名の一行は、偽の勅使として大阪から海路で堺を目指し、翌日には堺に上陸しました。天誅組は、先に狭山藩への使者を送り、協力を求めたものの、対応に苦慮した狭山藩はとりあえず武器を贈る形でその期待に応える結果となりました。

8月17日、彼らは五條代官所を襲撃します。彼らは代官所内部の情報を入手しており、迅速な行動に出たものの、襲撃当時、代官所内部では酒宴が開かれており、混乱の中での攻撃に成功します。彼らは代官所を占拠し、残虐な結果を招きました。

市政の崩壊

しかし、挙兵直後に襲撃された代官の鈴木正信が殺害されると、天誅組の活動が拡大する背景には、天皇を盾に掲げた尊皇攘夷派の運動が続いていました。天誅組は「天朝直轄地」と称し、近隣の藩に対しても恭順を迫りますが、すぐに状況は変わり始めます。

京では八月十八日の政変が発生し、勢力の逆転が起こります。中川宮が尊攘派を排除する動きを見せたことで、天皇の意志が再評価され、天誅組の挙兵が正当化される根拠を失うこととなりました。天誅組は追討命令を受け、形勢が厳しくなっていきます。

壊滅の過程

九月には、忠光を筵玉井の天の辻に本陣を移し、周辺の村からの物資徴収に励む一方で、追討する幕府軍との種々の戦闘が続きます。天誅組は自らの戦力には乏しく、数々の挫折と裏切りを経験します。結局、忠光は天誅組の壊滅を確認すると自らも捕縛され、長州藩邸に逃れましたが、最終的には捕まり自害することに至ります。残った者たちも次々と捕まるか戦死し、天誅組はその形を失うこととなります。

顕彰と評価

このように壊滅した天誅組ですが、明治維新後には再評価がなされ、彼らの活動に関してさまざまな顕彰が行われました。特に、天誅組の主導者たちは靖国神社に合祀され、またその活動は「増役士」により語り継がれています。現代においても、彼らの志と行動は評価され、「維新の魁」とまで称されることもあります。

天誅組の変は短期間に終わりましたが、幕末の政治闘争や尊皇攘夷の運動を象徴する出来事として、今なお人々の記憶に残り続けています。

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