五榜の掲示

五榜の掲示について

五榜の掲示（ごぼうのけいじ）は、1868年4月7日に発表された、高札形式の新しい戒めです。この掲示は、明治維新を迎えた新しい政府が国民に対して発した最初の禁止令であり、五つの重要な項目から成っています。今回の文書は、この歴史的な背景とその内容を詳しく解説します。

歴史的背景

明治維新を迎えた1868年、当時の日本は大きな変革の時代を迎えていました。江戸幕府が崩壊し、新たに明治政府が成立したことにより、国家体制が根本から変わりました。このような時期に、民衆に対して新しい秩序を伝えるために「五榜の掲示」が制定されました。

この掲示は、もともとは京の太政官によって発表され、法律としての効力を持ちました。「五箇条の御誓文」や「億兆を安撫し国威を宣揚するの御宸翰」といった文書が先に公表されたことを受け、民衆への新しい期待と指針を示す目的がありました。

掲示の内容

五榜の掲示は、以下の五つの札から構成されています。

1. 第一札: 五倫道徳遵守
人間関係における道徳、特に忠孝の精神を強調し、悪行を避けることを求めました。

2. 第二札: 徒党・強訴・逃散禁止
集団での謀議や暴力行為を禁止し、違反者は速やかに通報するように求めました。

3. 第三札: 切支丹・邪宗門厳禁
キリスト教および邪教に対する禁止が明示されました。

4. 第四札: 万国公法履行
外国との関係において国際法を遵守することが求められました。

5. 第五札: 郷村脱走禁止
地元住民の非合法な脱走を禁じ、社会の安定を図ろうとしました。

新政府の姿勢

五榜の掲示は、明治政府の基本的な姿勢を示すものでした。特に、第一札から第三札は江戸幕府の影響を強く受けていますが、同時に新政府の独自の理念も反映されています。例えば、第四札は明治政府独自のものであり、外国との関係を重視する姿勢を前面に出しています。

この掲示が出されたのち、6年後にはその役目を終えましたが、その中で新しい法治国家の基盤を築くための道筋として機能しました。五榜の掲示は、国が新たな時代に向けて旧来の体制から脱却しようとする意思を象徴するものでした。

その後の取り扱い

時間の経過とともに五榜の掲示は次第に形骸化していきます。特に、第三札に関する内容は公私の区別が難しい場面を生み出し、政府はこれに対処するために、1883年には改正を行い、キリスト教と邪教を区別しました。その後も新政府は法律の整備を進め、より良い社会秩序の構築に努めました。

最終的に、1873年には残りの高札も全て廃止され、明治政府は新しい時代の法治主義へと移行しました。このように、「五榜の掲示」は新しい政府にとっての重要な試金石であり、民衆に新たな秩序を示す象徴的なものでした。

結論

五榜の掲示は、明治政府の樹立を背景に、近代日本の法制度の整備に寄与した初期の重要な文書のひとつです。江戸幕府から明治政府への移行期に、多くの戒めとともに、国民の行動規範を定める役割を担っていました。それを通じ、新政府は国民に対し、平和で秩序ある社会を実現するための道筋を示しました。

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