五色沼 (仙台市)

仙台城と五色沼：日本のフィギュアスケート発祥の地

仙台市青葉区青葉山公園内にある五色沼は、仙台城三の丸を取り囲む堀の一部として生まれた、歴史と自然が融合した池です。仙台城は広瀬川の河岸段丘である青葉山に築かれた平山城で、本丸、二の丸、三の丸から構成されていました。三の丸の造営にあたって、広瀬川の後背湿地を掘って堀を作り、その土で土塁を築き、三の丸を堅固に守る構造となりました。この三の丸北側の堀が、現在の五色沼として知られています。

五色沼は、仙台城の三の丸の土塁に隣接し、周囲を木々が囲む静かな佇まいの池です。秋の紅葉シーズンには、水面に映る鮮やかな色彩が美しい景観を織り成します。かつては、大手門を挟んで北側にある二の丸をめぐる堀も存在しましたが、陸軍の駐屯地となった際に埋め立てられ、現在残っているのは三の丸の堀である五色沼と長沼のみです。

日本のフィギュアスケート発祥の地

明治維新後、仙台城が廃城となり、庶民が城跡に出入りできるようになると、冬に厚く凍結する五色沼は、仙台市民のスケートを楽しむ場として賑わいをみせるようになりました。そして、五色沼は「日本フィギュアスケート発祥の地」として広く知られるようになりました。

明治23年頃、仙台在住の外国人が五色沼でスケートを始めたのが始まりとされています。その後、明治30年頃には米国人デブィソンが子供たちにフィギュアスケートを教え始め、本格的なフィギュアスケートが普及するきっかけとなりました。明治42年頃には、旧制第二高等学校の生徒たちがドイツ語教師ウィルヘルからフィギュアスケートを学び、その技術を全国に広めていくなど、五色沼は日本のフィギュアスケート発展に大きく貢献しました。

五色沼ではフィギュアスケートだけでなく、アイスホッケーなどの様々なアイススケートが楽しまれていましたが、昭和30年代に入ると、仙台でもヒートアイランド現象の影響が顕著になり、冬季でも安全に氷上を楽しむことが困難になりました。そのため、五色沼でのアイススケートは歴史の幕を閉じました。

現在でも、五色沼のほとりには「日本フィギュアスケート発祥の地」の碑と、男女ペアスケーターのブロンズ像が設置され、日本のフィギュアスケートの歴史を今に伝えています。

五色沼の歴史年表

1871年（明治4年）: 廃藩置県、東北鎮台（後の第2師団）が仙台城二の丸に移転
1873年（明治6年）: 仙台城廃城
1890年（明治23年）頃: 仙台在住の外国人が五色沼でスケート開始
1897年（明治30年）頃: 米国人デブィソンが子供たちにフィギュアスケート指導開始
1909年（明治42年）頃: 旧制第二高等学校の生徒がドイツ語教師ウィルヘルからフィギュアスケート指導を受ける
1926年（大正15年）: 仙台市電開通、五色沼最寄り電停開業
1935年（昭和10年）: オーストリアのフィギュアスケート選手フリーツィ・ブルガーが模範演技を披露
1956年（昭和31年）: 五色沼で最後のアイスホッケー試合開催

五色沼は、仙台の歴史とフィギュアスケートの歴史が深く刻まれた、貴重な場所です。静かな水面と周囲の自然、そして歴史を感じさせる碑や像は、訪れる人々に忘れられない思い出を残してくれるでしょう。

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