後背湿地

後背湿地（こうはいしっち、back marsh）

後背湿地とは、自然堤防や砂丘などの微高地の背後に存在する微低地のことで、広義には沖積低地や浜堤平野の一種に分類されます。一般的には「バックマーシュ」とも呼ばれ、特に海成堆積地形に見られる微低地は「堤間湿地」や「堤間低地」と呼ばれることもあります。狭義では自然堤防の背後の低平地で、湿地状の部分を指す場合が多いです。

形成過程

後背湿地は、河川の流れによって運ばれたさまざまな粒径の砕屑物が堆積することによって形成されます。まず、河川が洪水によって流路から越流し、粗粒物質が堆積して自然堤防ができると、その後に流れる氾濫水には細粒の泥などが残ります。これにより、微高地の背後に泥が長期間にわたって堆積し、湿地が形成されることになります。

形成過程の中で、粗粒物質（大きな礫や砂）と細粒物質（泥の種類）の分布は地形によって異なります。例えば、扇状地の後背低地では、河川の氾濫によって礫が主体となる一方、三角州の後背低地では泥主体となり、粘土が多く堆積することが見られます。これにより、地域ごとに様々な湿地環境が見られることになります。

後背湿地は、自然堤防や砂丘といった微高地によって川や海から隔てられており、シルトや粘土の堆積物が多いため排水性が悪く、三日月[[湖]]などが点在することがよくあります。

土地利用

日本の一部の地域では、後背湿地は水稲栽培に適した土地として開墾され、水田として長らく活用されてきました。特に、江戸時代以降に発展した治水や土木の技術により、湿地の排水や湖沼の干拓が進められ、新たな農地が開発されました。信濃[[川]]や阿賀野川周辺の越後平野、北上川の仙台平野などは、このようにして形成された稲作地域です。

対照的に、北[[海道]]東部と北部では、気候により稲作が行われていないため、多くの地域が湿原として残っています。しかし第二次世界大戦後は大規模な排水工事が行われ、農業利用もされるようになりました。さらに、東京都や大阪市、名古屋市などの都市は沖積平野に位置しており、都市の成長に伴い後背湿地の市街化も進行しています。この地域は、地価が比較的低いため、工場の建設や新興住宅団地の造成が行われることが多いです。

自然災害リスク

後背湿地は地理的な特性により、洪水時に浸水被害を受けやすく、軟弱な地盤が特徴であるため地震などにも脆弱です。特に三角州や氾濫原の後背湿地では、地盤の液状化や長周期の地震動によって重大な被害が生じる可能性が高まるため、注意が必要です。

以上のように、後背湿地はその形成過程や土地利用の面で地域によって異なる特性を持ち、多様な環境と課題があります。

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