五鹿充宗

五鹿充宗（ごろく じゅうそう）

五鹿充宗は、前漢時代に生きた人物であり、字を君孟と称しました。彼の生涯は、学問と政治が複雑に絡み合った時代を象徴しています。

学問の道

五鹿充宗は、易経を梁丘臨（梁丘賀の子）から学び、その道の大家として名を馳せました。易経は、古代中国の思想や哲学が凝縮された書物であり、その解釈は政治や社会にも大きな影響を与えました。

権力との癒着

五鹿充宗は、中書令であった石顕と親交を深め、その影響力によって尚書令という地位にまで上り詰めました。しかし、彼と中書僕射の牢梁が石顕に接近し、地位を得る様は、世間から批判の目で見られていました。「牢よ石よ、五鹿は客よ。印はなんと多いことよ。綬はなんと長いことよ」という歌は、彼らの権力濫用を揶揄したものです。

京房との対立

同じく易経を学んだ京房が元帝に重用されそうになると、五鹿充宗は京房を憎みました。京房が石顕一派の排除を企てていたこともあり、五鹿充宗は石顕と共謀して京房を排斥しました。学問の世界においても、政治的な駆け引きが繰り広げられていたことがうかがえます。

朱雲との論争

建昭5年（紀元前38年）には、少府に遷りました。元帝は易経の梁丘賀説を好み、五鹿充宗と他の学者に議論させ、その異同を考察させようとしました。しかし、五鹿充宗の権勢と弁舌の巧みさから、他の学者は彼に対抗することを避け、病気を理由に表舞台から姿を消しました。そんな中、侠客上がりの易経学者である朱雲が、五鹿充宗に堂々と論争を挑みました。この一件は、「五鹿の長い角を朱雲が折った」と称され、儒者の間で語り草となりました。

失脚と左遷

元帝の死後、成帝が即位すると、後ろ盾であった石顕が失脚し、五鹿充宗も連座して左遷されることになりました。玄菟太守として地方に赴任することになり、同じく石顕の派閥であった伊嘉は雁門都尉に、牢梁や陳順は罷免されました。この状況を世間は「伊は雁門に、鹿は玄菟に。牢と陳とは価値が無いので取り去った」と歌い、皮肉りました。

参考文献

巻19下百官公卿表下
巻67朱雲伝
巻75京房伝
巻88梁丘賀伝
* 巻93石顕伝

五鹿充宗の生涯は、前漢時代の政治と学問、そして人々の思惑が複雑に絡み合った時代を映し出す鏡と言えるでしょう。

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