井上一雄

井上一雄（いのうえ かずお）は、1914年8月1日に東京で生まれ、34歳という若さでこの世を去った日本の漫画家です。彼の短い生涯は、病との闘いと、子供たちに夢を与える漫画への情熱に彩られていました。

長野県伊那中学校（現・長野県伊那北高等学校）在学中に肋膜炎を患い、中退を余儀なくされた井上は、その後十数年にわたる闘病生活を送ります。この病によって左足が不自由になった上、戦後には関節炎も発症し、身体的な苦痛と闘いながらの創作活動となりました。

しかし、病床にあっても井上の漫画への情熱が衰えることはありませんでした。少年雑誌への投稿を続け、1934年にはついに『少年倶楽部』への掲載が認められ、漫画家としてデビューを果たします。同誌では、『愉快小僧』や『健ちゃんの鍛錬』などの作品を連載し、子供たちの人気を集めました。

戦後、井上は活動の中心を『漫画少年』に移し、さらに精力的な執筆活動を展開します。特に、野球漫画『バット君』は彼の代表作として知られ、多くの読者に愛されました。『漫画少年』で連載を持つ原一司、長谷川町子、倉金章介、古沢日出夫、沢井一三郎、芳賀まさおら6人の児童漫画家とともに、井上は「七福人」と称され、その才能を高く評価されました。

しかし、井上の輝かしい活躍は長くは続きませんでした。『バット君』を未完のまま、1949年5月3日に34歳で急逝。早すぎる死は、多くのファンに惜しまれました。

主な作品：

愉快小僧（1938年 - 1941年、少年倶楽部）
健ちゃんの鍛錬（1942年、少年倶楽部）
バット君（1947年 - 1949年、漫画少年）
投手の正ちゃん（1948年 - 1949年、野球少年）

井上一雄は、病に苦しみながらも、子供たちに夢と希望を与え続けた漫画家でした。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、その功績は語り継がれています。

もう一度検索