倉金章介

倉金章介（くらかね しょうすけ、本名：倉金虎雄〈くらかね とらお〉、1914年2月13日 - 1973年8月25日）は、日本の漫画家であり、出版美術家連盟の会員でした。彼の最も有名な作品は、愛らしいキャラクターとユーモラスなストーリーが魅力の少女漫画『あんみつ姫』です。また、倉金良行（くらかね よしゆき）の筆名でも活動していました。

生い立ちと漫画家への道

1914年（大正3年）2月13日、山梨県甲府市で料理屋の四男として生まれた倉金は、幼少期から内向的な性格で、絵を描くことに興味を持っていました。甲府市立甲府商業学校（現在の甲府市立甲府商業高等学校）在学中から、『少年倶楽部』や『少女倶楽部』といった雑誌に作品を投稿していました。

卒業後、実家の料理屋を継ぐことを嫌った倉金は、憧れの漫画家である田河水泡に弟子入りを志願。雑誌に掲載された自身の作品や写真、履歴書を同封した手紙を送ったところ、上京を促す返事を受け取り、1932年（昭和7年）に姉に連れられて上京、田河水泡の内弟子となりました。

1934年（昭和9年）に独立し、1935年（昭和10年）には倉金良行の名で『少女倶楽部』10月号にて『どりちゃんバンザイ』の連載を開始し、漫画家としてデビューを果たしました。

戦時下の活動と復員

1941年（昭和16年）10月に召集された倉金は、従軍記者として仏印のサイゴン（現在のホーチミン市）へ出発。その後、日本陸軍の占領下にあったシンガポールで、現地民の宣撫を目的とした新聞編集の仕事に従事しました。

1946年（昭和21年）5月に復員し、戦後は絵本の挿絵の仕事から再スタート。1948年（昭和23年）に結婚し、翌年には長男が誕生。生活が安定した1949年（昭和24年）に、光文社の月刊雑誌『少女』5月号から『あんみつ姫』の連載を開始すると、これが大ヒット。一躍人気漫画家となりました。また、同年9月号からは、筆名を章介と改めました。

人気漫画家として

1953年（昭和28年）には、凡人社（現在のマガジンハウス）の月刊雑誌『平凡』で『てんてん娘』の連載を開始。同年には、第二回小学館児童文化賞（絵画奨励賞）を受賞するなど、その才能を高く評価されました。『あんみつ姫』や『てんてん娘』の連載終了後も、「少女時代ギャグ」漫画の制作に注力しました。

1973年（昭和48年）8月25日、心臓発作により59歳で急逝。その短い生涯の中で、数々の名作を生み出し、多くの人々に愛され続けました。

人物像

倉金は、幼少期は内向的な性格で、外で遊ぶよりも家の中で絵を描くことを好んでいました。学生時代は勉強熱心で近眼になったものの、野球観戦を趣味とする一面もありました。また、体操は苦手で、逆上がりができるようになるまで猛練習したというエピソードも残っています。

田河水泡の内弟子時代には、家事を完璧にこなすなど、几帳面な性格でした。同門の杉浦茂や長谷川町子とは、漫画について熱く語り合い、新しい漫画の創造を目指していました。お酒は全く飲まず、甘いものが好きで、食べることが好きで、実家が料理屋だったこともあり、料理にも詳しかったそうです。

独身時代は、映画、歌舞伎、宝塚歌劇など、華やかな娯楽を好んでいました。特に宝塚歌劇は熱烈なファンで、何度も同じ公演を観劇したそうです。その華やかさは、『あんみつ姫』の衣装にも影響を与えたと言われています。

友人思いな一面も持ち合わせており、同級生で漫画家志望だった小沢よね吉を支援したり、小沢の事故死後には、その葬儀を取り仕切ったというエピソードも残っています。

クリスチャンの女性と恋に落ちたものの、自身の仏教徒という立場から失恋した経験があったという話も伝わっています。

子供好きな性格で、内弟子時代には子供の面倒を見たり、シンガポールでは現地の子供たちとのコミュニケーションを試みるなど、優しい一面も持ち合わせていました。

復員後には、歩行中に危機に気づき、杉浦茂を助けたこともあります。

『あんみつ姫』の連載開始にあたっては、「敗戦後の、みじめなギスギスした、ざらざらした昨日今日がたまらなくいやで、そんな生活しか知らない子ども達に、日本にはこんな良い時代もあったんだぞと叫びたいような気持ちで『あんみつ姫』を画きはじめました」と語っています。

また、連載中は、読者からの手紙やイラストに励まされ、また、嫉妬の手紙にも、漫画家としてのモチベーションを高めていました。多忙な日々の中で、深夜まで構想を練っていたそうです。倉金夫人の話によると、光文社の編集部員から「クラスでも勉強のよくできる男の子は『あんみつ姫』のファンだ」という話を聞き、大変喜んでいたそうです。

編集長の黒崎勇によると、倉金は神経性の心臓病を抱えており、書き直しを求められると休載することがあったといいます。

また、まだ無名だった渥美清を高く評価しており、連続テレビドラマ『あんみつ姫』の「奴・せんべい」役に推薦したというエピソードも残っています。

主な作品

代表作として、『どりちゃんバンザイ』、『おさる太閤記』、『おさる三銃士』、『あんみつ姫』、『豆姫さま』、『てんてん娘』などが挙げられます。

これらの作品のうち、『あんみつ姫』と『てんてん娘』は、映画化やテレビドラマ化もされており、多くの人々に親しまれています。

以下に、主な雑誌連載作品と描き下ろし単行本作品を一部紹介します。

どりちゃんバンザイ（1935年 - 1939年、少女倶楽部、大日本雄弁会講談社）
アキレカヘルの助（1936年、主婦之友社）
ゴロリゴロベエ（1937年、主婦之友社）
オサルサル吉太閤記（1937年、新少年、博文堂）
ムカシバナシ（1940年、小学館）
昭南日報叢書 日本語図説（1942年、昭南日報社）
野球まんが 森のホームラン王（1947年、東京書房）
みみずく太郎（1947年、明々社）
まんが 白雪姫（1947年、ひばり書房）
オ伽ノ国メグリ（1947年、新文化社）
チーちゃん.ミーちゃん ふしぎな国めぐり（1947年、小学館）
おもしろブック ふくろうのそめものやさん（1947年、集英社）
ふしぎなつぼ（1948年、集英社）
まんが ピノチオの新冒険（1948年、新生閣）
おさる太閤記（1948年、東京漫画出版社）
良い子クラブ（1948年、小学館）
かくれみの（1948年、Gメン社 - ロマンス社）
どりちゃん豆探偵（1949年、世界社）
かくれみの どろん消太郎（1949年、東京漫画出版社）
おさる三銃士（1949年 - 1956年、広島図書、大日本雄弁会講談社）
あんみつ姫（1949年 - 1957年、光文社、集英社）
ベンチくん（1950年 - 1952年、光文社）
ブウ･ワン･ニャン物語（1950年 - 1951年、広島図書）
向う一軒両隣り（1950年、光文社）
白雪姫（1950年、偕成社）
ピカドン娘（1950年 - 1953年、偕成社、中村書店）
立志漫画 お猿太閤記（1951年 - 1954年、集英社）
ゲラ.シク.プン三人組（トリオ）（1951年 - 1952年、大日本雄弁会講談社）
びっくりのくに（1952年、大日本雄弁会講談社）
水戸黄門の孫 豆姫さま（1952年 - 1960年、主婦の友社、旺文社）
あんこちゃん（1953年、家の光協会）
漫画放浪記 てんてん娘（1953年 - 1959年、凡人社 - 平凡出版）
まんが絵物語 もん子姫諸国漫遊記（1953年、集英社）
えばなし きのこのぽっくりくん（1954年、学習研究社）
きゅうどん夢道中（1954年、大日本雄弁会講談社）
三人姫（1954年、大日本雄弁会講談社）
テキサスヒットの助（1954年、光文社）
ゲラ.シク.プン物語（1954年、光文社）
忍術小僧（1955年、光文社）
まんがえばなし ぽんぽこ花合戦（1955年、集英社）
ピノキオ姫（1955年、大日本雄弁会講談社）
かしまし娘（1955年、大日本雄弁会講談社）
ぼくは若さま（1956年、大日本雄弁会講談社）
ちゃこちゃん（1956年 - 1957年、大日本雄弁会講談社）
しゅうちゃん（1956年 - 1959年、大日本雄弁会講談社）
しょうごちゃん（1956年、学習研究社）
サンドイッチきょうだい（1957年、大日本雄弁会講談社）
とらちゃん（1957年、集英社）
てんてんちゃん（1957年 - 1959年、大日本雄弁会講談社）
まんじゅうくん しお豆くん（1957年 - 1959年、小学館）
あんみつ姫もお年頃（1958年 - 1962年、集英社）
あんみつひめ（1958年 - 1960年、講談社、小学館）
たぬきごてん ぽんぽこひめ（1958年 - 1959年、小学館）
電化娘（1958年、松下電器産業）
彦左エ門の孫 ダイナマイト娘（1959年 - 1961年、主婦と生活社）
おピンクトリオ（1960年 - 1961年、平凡出版）
極楽御殿（1961年 - 1963年、旺文社）
紅やのお嬢（1962年、集英社）
がっちりゆこう 極楽三人組（トリオ）（1963年 - 1964年、旺文社）
あんみつひめ（1963年、集英社）
チャコの腰元日記（1964年 - 1965年、旺文社）
豆姫さま（1964年、講談社）

倉金章介は、そのユーモラスで愛らしいキャラクターと、夢と希望に満ちた物語で、多くの人々に愛され続けた漫画家です。彼の作品は、今もなお、多くの人々に感動と笑顔を与え続けています。

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