井上亮 (ジャーナリスト)

井上亮：時代を映すジャーナリストの眼差し

井上亮氏は、日本経済新聞の記者として、社会の様々な出来事を見つめ、歴史の深層を掘り下げてきたジャーナリストです。1961年に大阪府で生まれ、関西学院大学法学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。東京と大阪の社会部で、警視庁、大阪府警、宮内庁、法務省といった重要機関を担当し、事件や政治、社会問題の最前線で取材活動を展開しました。

長岡支局長を経て社会部編集委員となった井上氏は、宮内庁長官富田朝彦の「富田メモ」報道で2006年度新聞協会賞を受賞。この受賞は、彼のジャーナリストとしての卓越した能力と、社会に対する深い洞察力を証明するものでしょう。富田メモは、昭和天皇の晩年の考えや行動を記録した貴重な資料であり、その報道は、日本の近現代史を理解する上で重要な意味を持ちました。

井上氏の著作は、その取材経験と歴史への深い関心を反映しています。

『新潟の勘ちがい 日経長岡支局メールレター』(2006年) では、地方からの視点で社会を見つめる眼差しが感じられます。
『非常時とジャーナリズム』(2011年) では、ジャーナリズムの役割と責任について考察。
『焦土からの再生 戦災復興はいかに成し得たか』(2012年) では、戦後の日本の復興過程を詳細に描き出しています。
『天皇と葬儀 日本人の死生観』(2013年) では、天皇の葬儀を通して日本人の死生観に迫ります。
『熱風の日本史』(2014年) では、歴史の転換期に生きた人々の情熱と葛藤を描いています。
『忘れられた島々「南洋群島」の現代史』(2015年) では、南洋群島の歴史を掘り起こし、忘れ去られた人々の記憶を蘇らせています。
『昭和天皇は何と戦っていたのか　『実録』で読む87年の生涯』(2016年) では、昭和天皇の生涯を辿り、その内面を描き出しています。
『天皇の戦争宝庫　知られざる皇居の靖国「御府」』(2017年) では、皇居の知られざる一面に光を当てています。
『象徴天皇の旅　平成に築かれた国民との絆』(2018年) では、平成の時代における天皇と国民の関係を考察しています。
そして2024年7月には、『比翼の象徴　明仁・美智子伝』(岩波書店) が刊行予定です。この作品は、明仁上皇と美智子皇后の生涯を、戦争と新生日本、大衆の天皇制、平成の革命という3つの視点から描き出す大作となっています。

また、井上氏は、半藤一利氏、保阪正康氏といった著名な歴史家との共著も多数発表しています。『「東京裁判」を読む』、『「BC級裁判」を読む』、『平成と天皇』など、いずれも日本の近現代史を深く理解するための必読書と言えるでしょう。さらに、井上氏は編者としても才能を発揮しており、半藤一利氏の遺作となった『いま戦争と平和を語る』や、西村秀一氏の『新型コロナ「正しく恐れる」』などの書籍を手がけています。

井上亮氏は、ジャーナリストとして、また著述家として、現代社会と歴史を結びつけ、私たちに新たな視点を提供し続けています。その知的な探求心と、社会に対する深い愛情は、多くの読者に感銘を与え、刺激を与え続けているでしょう。

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