富田朝彦

生涯

富田朝彦は、1920年（大正9年）に北海道で生まれました。函館中学、旧制二高を経て、1943年（昭和18年）に東京帝国大学法学部を卒業後、海軍を志願し、海軍経理学校に入学。1944年（昭和19年）に海軍主計科士官となり、最終階級は海軍主計大尉でした。

戦後、内務省に入省し、大臣官房属となりました。その後、警察庁に移り、警視庁交通部長、警察庁長官官房長、警察庁警備局長などを歴任。警備局長時代には、後藤田正晴警察庁長官の下、あさま山荘事件などの重大事件を担当しました。その後、警視庁副総監、内閣調査室長を経て、1974年（昭和49年）に宮内庁次長、1978年（昭和53年）に宮内庁長官に就任しました。

1992年（平成4年）には、勲一等瑞宝章を受章。2003年（平成15年）11月13日、心不全のため東京都内の自宅で83歳で逝去し、正三位が贈られました。

親族

父は富田朝一で、東北帝国大学水産学科（現在の北海道大学水産学部）を卒業。岳父は島本融。長男は政治学者の富田広士、孫には沖縄反基地運動家の富田晋がいます。

事績

富田朝彦の最も重要な事績の一つは、宮内庁長官として、昭和天皇の開腹手術を決断したことです。1987年（昭和62年）、昭和天皇が十二指腸乳頭周囲癌の治療のためにバイパス手術を行うことになった際、富田は、歴代天皇で初めてとなる開腹手術を許可しました。これまで、天皇への鍼灸治療さえもためらわれていた状況下において、この決断は非常に大きなものでした。

退任後

1988年（昭和63年）6月14日に宮内庁長官を辞任し、後任には次長の藤森昭一が昇格しました。退任後は、宮内庁参与、国家公安委員会委員などの公職を務める傍ら、財団法人菊葉文化協会理事長、財団法人昭和聖徳記念財団理事として、昭和天皇の聖蹟に関する講演活動を行うなど、皇室を支える活動を続けました。

富田メモ

2006年（平成18年）7月20日には、富田が生前に昭和天皇や側近の発言を記録した日記の一部が、日本経済新聞に掲載され、世間を騒がせました。いわゆる「富田メモ」です。このメモには、靖国神社の新しい宮司がA級戦犯を合祀したことに昭和天皇が不快感を抱き、1975年（昭和50年）11月21日を最後に靖国神社への参拝を取りやめたという内容が記されており、その解釈をめぐり大きな議論を呼びました。

著書

『公安委員会の性格』警察協会、1948年。
島本禮一・富田朝彦編集 編『島本融その思考 企業と人間北海道銀行創設の記録』島本初音、1977年。
島本禮一・富田朝彦編集 編『島本融その足跡』島本初音、1977年。
島本禮一・富田朝彦編集 編『島本融その追憶』島本初音、1977年。

関連項目

後水尾天皇 - 病気治療に際し玉体に触れることができない、という事情から退位を望んだ。
入江相政 - 侍従長『入江相政日記』がある
徳川義寛 - 侍従長
卜部亮吾 - 侍従『卜部亮吾侍従日記』がある
ナショナル・トラスト - 公募で訳語は「国民環境基金」に決まったが（昭和58年）現在のところ定着していない。公募に公務員として応募し、当選して、身元がわかり記事になった。
宮内省

外部リンク

* 『富田 朝彦』 - コトバンク

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