井上伝

井上伝：久留米絣の創始者

井上伝（いのうえ でん、天明8年12月29日（1789年1月24日） - 明治2年4月26日（1869年6月6日））は、江戸時代後期に活躍した女性で、久留米絣の創始者として知られています。

生涯

伝は、天明8年（1789年）に、筑後国久留米の通町で米穀商を営む平山源蔵・美津夫妻の娘として生まれました。幼い頃から織物に親しみ、7歳から織機を習い始めました。13歳の頃、藍染めの布地に偶然白い斑点ができたことから、独自の絣の図案を考案するに至ります。この偶然から生まれた発想が、後に久留米絣として広く知られる織物の基礎となりました。

21歳の時、伝は原古賀町の井上八次に嫁ぎ、二男一女をもうけました。しかし、伝が28歳の時に夫の八次が病死。その後は、女手一つで子供たちを育てながら、試行錯誤を重ね、久留米絣を「阿伝加寿利」として売り出しました。その織物の美しさは評判を呼び、当初は二十人前後だった弟子は、伝が40歳になる頃には3400人を超えるほどになりました。弟子の中には各地に散らばり、その技術を広めた者も多く、久留米絣は久留米藩の特産品として発展しました。

晩年は、実家の近くに工場を設けたり、久留米絣の出張教授を行うなど、後進の育成にも力を注ぎました。明治2年（1869年）に82歳で亡くなりました。墓所は久留米市寺町の徳雲寺にあります。

久留米絣は、昭和51年（1976年）に経済産業大臣指定伝統工芸品に指定され、その価値と技術が現代にまで受け継がれています。

家族

伝の長男である兵太郎は、稲益屋という店の娘「ミサキ」と恋仲になり、伝の了承を得て稲益家の婿養子となりました。兵太郎はミサキとの間に長男の半吾と3人の娘をもうけています。次男の浅吉は幼くして亡くなりました。長女の糸は、伝の知り合いの店で働いていた儀助という男性と結婚し、一男二女に恵まれました。

井上伝と久留米絣

井上伝は、その独創的な発想と技術によって久留米絣を創始し、地域産業の発展に大きく貢献しました。彼女の功績は、現在も久留米絣を通して語り継がれています。田中久重とも協力して絵絣を完成させました。

五穀神社には、久留米市出身の著名人の胸像の一つとして、井上伝の胸像が建立されています。

井上でん池田俊(ヒマラヤ書房, 1943)

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